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バケーションレンタルというものを知ってから、私の移住計画はさらにおかしな方向へ進み始めた。

最初は、
「家を買う前に、一か月くらい住んでみるのもいいかもしれない」
程度だった。
それが物件を眺めているうちに、
「一か月じゃなくて三か月でもよくない?」
となり、
そのうち、
「そもそも、家を買わなくてもいいのでは?」
というところまで行った。
我ながら展開が早い。
家を買わずに、数か月ずつ暮らしてみる
この頃に考えていたのは、家具付きの貸別荘やバケーションレンタルを、三か月から半年くらいずつ借りる生活だった。

春はここ。
秋はここ。
冬はここ。
夏は暑くなる地域を避けて、別の場所へ移動する。
家具も家電もある。
Wi-Fiもある。
犬猫と泊まれるところを選べばいい。
家を所有していないので、屋根が壊れても私の屋根ではない。
給湯器が壊れても私の給湯器ではない。
固定資産税もない。
草刈りに追われることもない。
そして飽きたら、
次へ行けばいい。
……ものすごく気楽では?
と思った。
夏は秋田に帰ればいいのでは?
貸別荘を調べていて、当然ながら問題も出てきた。
夏である。
避暑地の貸別荘は夏になると一気に高くなる。
特に軽井沢。
夏の軽井沢は人気なので、普段よりずっと高い。
ならば。
その時期だけ借りなければいい。
私は秋田出身なので、夏の数か月は実家に帰るという案まで考え始めた。
たとえば夏の三か月を秋田で過ごす。
残り九か月は三か所くらいの貸別荘を、それぞれ三か月ずつ借りる。
これなら一年で四つの土地に住める。
なんだか突然、
「移住先を探している」
というより、
「日本のどこに住むと楽しいのか、自分で実験してみる」
みたいになってきた。
三か月住めば、旅行ではわからないことが見えてくる
旅行なら、多少不便でも楽しい。
二泊三日ならスーパーが遠くてもいいし、病院が近くになくても困らない。
雪が降ったら、
「わあ、きれい」
で済む。
でも暮らすとなれば話は違う。
スーパーはどこにあるのか。
宅配便は普通に来るのか。
ネットは安定しているのか。
病院はあるのか。
犬猫を連れていくなら動物病院も必要になる。
朝は静かでも、夕方になると道路が混むかもしれない。
夏は涼しくても、冬は猛烈に寒いかもしれない。
近所にどんな人が暮らしているのかも、数日の旅行ではわからない。
でも三か月暮らしたら、かなり見えてくる。
春だけではなく、
夏。
秋。
冬。
季節を変えてまた訪れれば、もっとわかる。
だったらいきなり家を買うより、
全国各地を数か月ずつ暮らしてから決めたほうが失敗しないのでは?
私は本気でそう考え始めた。
気に入った場所は翌年も借りる
さらに考えた。
毎年まったく違う場所へ行く必要もない。
一度泊まって、
「ここ好きだな」
と思った場所があったら、翌年はもっと長く借りればいい。
たとえば最初は三泊。
次は一週間。
それでも好きなら、翌年は一か月。
さらに、
「ここなら本当に暮らせそう」
と思ったら三か月。
そうやって少しずつ滞在期間を延ばしていく。
これなら、
ネットで物件を見ただけで何百万円、何千万円の家を買うより、ずっと安全だと思った。
当時の私は翌年の候補を前年から探して、
「来年はここに住んでみよう」
と計画するところまで妄想していた。
もはや移住ではない。
渡り鳥である。
そして「5年くらいやってみる?」となった

一か所三か月。
一年で三、四か所。
それを何年か続けたらどうなるだろう。
五年間なら、単純計算でもかなりの土地で実際に暮らせる。
長野。
静岡。
山梨。
東北。
海の近く。
山の近く。
街に近い田舎。
本当に何もない田舎。
ネットで、
「移住におすすめ!」
と書かれている記事を百本読むより、自分で三か月住んだほうが早い。
五年間あちこちで暮らして、
その中で、
「もう一度ここに戻りたい」
と思った場所があったら、そこが自分たちの移住先なのではないか。
逆に、五年経っても一か所に決められなかったら。
それはそれで、
定住しない暮らしのほうが自分たちには合っている
ということなのかもしれない。
そんなことまで考えていた。
家を買わない。
家具も増やさない。
修繕もしない。
気候が合わなければ移動する。
飽きたら違う土地へ行く。
ものすごく自由だ。
この時点では、「何も所有せず、貸別荘を渡り歩けばいい」というのはかなり理想的な暮らし方に思えた。
ただ、ひとつだけ問題があった
私は貸別荘のサイトを見るたびに、
「この家いいなあ」
「この庭いいなあ」
「こんなところで犬と暮らしたいなあ」
と考えていた。
そして、
「ここはキッチンがもう少し広ければいいのに」
「ここに薪ストーブがあったら最高」
「庭がもっと広かったら犬を遊ばせられる」
「和室があったら外国人にも喜ばれそう」
などと、
頼まれてもいないのに貸別荘を勝手に改造し始めていた。
この時点ではまだ、
私は完全に借りる側のつもりだった。
五年間、全国の貸別荘を渡り歩く。
いろんな土地に住む。
それから、自分たちが最後に住む場所を決める。
そんな未来を想像していた。


