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Season 0|移住準備編Episode 04

移住への熱が冷めた。今のままでいい。でも、それでいいのか

移住への熱が冷めた。今のままでいい。でも、それでいいのか
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ここ1か月くらい、ぴちゅ帝さんとラビはほぼ毎日のように移住について話していた。

田舎で暮らしたい。犬や猫と暮らしたい。ぴちゅ帝さんは薪ストーブのある家でまったりしたい。ラビは畑を作ったり、DIYをしたり、風力発電や温度差発電を試したり、何かよく分からない魔道具を作ったりしたい。

そこから移住候補地を調べ、空き家バンクを見て、地域のことを調べ、自治体への相談や旅行の計画まで考えた。土地を買ったらどう開拓するか、草だらけだったらどうするか、草刈機は何を使うかというところまで話が進んだ。

最初はかなり楽しかった。

ところが、ある日急に二人とも移住への熱が冷めた。

移住に飽きたというより、二人とも張り切りすぎた

田舎暮らしが嫌になったわけではない。今でも犬や猫と暮らしたいし、薪ストーブも欲しい。畑もやりたいし、ものづくりも発電実験もやってみたい。

それなのに、なぜ急に熱が冷めたのか。

たぶん、二人とも張り切りすぎた。

ぴちゅ帝さんもラビも、かなりせっかちなところがある。何かやりたいことが見つかると、「どうすればできるのか」を考えて、すぐにゴールを設定する。そしてゴールが決まると、そこまでに必要なことを全部タスクにしてしまう。

今回もそうだった。「田舎で暮らしたいね」という話だったはずが、いつの間にか、候補地を比較する、空き家バンクを見る、雪の量を調べる、交通を調べる、自治体へ相談する、現地を見に行く、と次々にタスクになった。

そして1か月くらいで、移住候補地もかなり絞られた。自分たちが欲しい家の条件も分かってきた。住みたい環境も、田舎へ行ったら何をしたいのかも、かなり整理できた。

あとは条件に合う家を探すだけになった。

今すぐ移住するわけではないので、50歳くらいまでの間に条件に合う空き家が出てくるのを待てばいい。つまり今後やることは、空き家情報を見る。なければ閉じる。また見る。なければ閉じる。

突然、夢だったはずの移住がルーチンになった。

家さえ見つかれば移住できる。でも、本当にそれでいいのか

二人の場合、何年もかけて移住準備をしなければならないというより、条件の合う家さえ見つかればかなり話が進んでしまう。

だからこそ少し怖くなった。

家が見つかった。じゃあ買おう。引っ越そう。

それで本当にいいのだろうか。

今まで二人で毎日話して、最短距離で移住というゴールへ向かってきた。でも、ゴールへ行けそうになったところで、「そもそも本当にそこへ行きたいのか」が分からなくなった。

移住したかったのか。それとも、今とは違う人生をやってみたかったのか。

その二つは似ているようで、少し違う。

冷静に考えると、今の生活はめちゃくちゃ便利である

今住んでいるのは東京の湾岸エリアにあるマンションで、冷静に考えるとものすごく便利だ。

買い物には困らない。交通も便利。病院もある。食べる場所もたくさんある。欲しいものがあればすぐ買えるし、ネットで注文すればすぐ届く。

今の家が嫌いなわけでもない。

それどころか、もし今のマンションで犬や猫と理想どおりに暮らせる状況になっていたら、それだけでかなり目的を達成していたのかもしれない。このあたりはまた別の記事で書きたいが、今は犬や猫とどう暮らすかということも含めて、これからの人生そのものをどうするのか考えていた。

だから疲れたのかもしれない。

二人で話していると、「もう今のままでいいんじゃない?」という結論にもなる。

ここは便利だし、犬や猫と暮らせるようになったら、なおさらここから離れるのは面倒になるだろう。田舎に別荘を買ったところで、最初は楽しく通っていても、そのうち「今週は疲れたからいいか」「行くの面倒だな」となって、結局ほとんど行かなくなる未来も想像できる。

だったら別荘なんて買わない。移住もしない。

今の便利な場所で、そのまま暮らせばいい。

かなり合理的である。

でも、残りの人生をこのまま終わらせたくはない

問題は、そこで話が終わらなかったことだった。

今の暮らしに大きな不満があるわけではない。それでも、このまま何も変えずに暮らして、10年後も20年後も似たような毎日を送っている自分を想像すると、それも何となく嫌だった。

残りの人生で何かを変えたい。新しいことに挑戦したい。

知らない場所へ行ってみたい。今まで作ったことのないものを作ってみたい。自然の中で暮らしてみたい。失敗して、直して、また試してみたい。

便利な生活を捨てたいわけではない。でも、便利だからという理由だけで何も変えない人生にもしたくない。

たぶん、そこが本当のところだった。

いきなり移住する必要はなかった

そこで考え方を変えることにした。

移住するか、今のまま暮らすか。その二択にする必要はない。

まず遊びに行けばいい。

自然の中で暮らすのが楽しいのか、先に確かめればいい。キャンプでもいいし、バンガローでもロッジでもいい。楽しかったら、もう少し先へ進めばいい。

ぴちゅ森ではもともと、最初から大きなお金をかけず、小さく試して、うまくいけば大きくすることを大切にしている。

なのに、なぜか移住だけは最初から完成形へ行こうとしていた。

数年前、奥多摩へキャンプに行った

実はラビは数年前に奥多摩へキャンプに行ったことがある。

電車でテントや寝袋などのキャンプ道具を全部持っていった。

ものすごく疲れた。

しかも行ったのが11月だったので、夜は死ぬほど寒かった。

あのときは「キャンプって大変だな」という印象がかなり残った。でも今になって考えると、キャンプそのものが嫌だったわけではない。

大量の荷物を持って電車で奥多摩まで行ったことと、11月だったことが大変だっただけなのかもしれない。

だったら今度は、もっと簡単にすればいい。

まずは東京近辺で、テントを持たずに自然の中へ行く

最初からテントを持っていかなくてもいい。

バンガローやロッジなら、着替えなど最低限の荷物だけ持って電車で行ける。

候補の一つが千葉県野田市の清水公園キャンプ場。バンガローがあるので、まずはこういう場所で気軽に自然泊を試してみたい。

東京側なら青梅・御岳もいい。JR青梅線の御嶽駅から歩いて行ける一棟貸しの宿には、薪ストーブを使えるところもある。

まずはこういうところへ泊まってみる。自然の中を散歩して、ご飯を食べて、夜になったら小屋へ戻る。それで「やっぱりこういう生活好きだな」と思えるか確かめればいい。

冬はぴちゅ帝さんに薪ストーブを体験してもらいたい

ぴちゅ帝さんは、田舎で暮らすなら薪ストーブが欲しいと言っている。

だったら、家を買う前に実際に使ってみればいい。

寒い冬の日に薪ストーブのあるロッジへ泊まって、火をつけて暖まる。外は寒いけれど、室内では薪が燃えている。その前でまったりする。

「やっぱり最高」と思うかもしれない。逆に「薪を入れるの意外と面倒だね」と思うかもしれない。

どちらでもいい。実際に体験してから考えればいい。

あきる野市の3rdプレイスあきる野にも、薪ストーブのあるログコテージがあるので冬の体験候補になりそうだ。

そして、その横でラビはたぶん「この熱、温度差発電に使えないかな」と考えている。

キャンプ暮らしが楽しかったら、レンタカーを借りる

最初は電車でいい。

ラビはペーパードライバーなので、いきなり車を買う必要もない。

電車で行ける自然泊が楽しかったら、次はレンタカーを借りる。

車があればキャンプ道具を背負わなくていい。スーパーへ寄れる。温泉にも行ける。ホームセンターにも行けるし、気になった町を自由に見て回ることもできる。

そうなれば東京近辺だけでなく、長野や白河など、今まで移住候補として調べていた場所にも遊びに行ける。

ただし今度は、「移住候補地の視察」という仕事みたいな行き方にはしたくない。

普通にキャンプへ行く。温泉へ入る。地元のスーパーや直売所へ寄る。そのついでに町を見て、「ここ、なんか好きだな」と思えばまた来る。

それくらいがいい。

それでも楽しかったら、軽バンを買う

レンタカーで出かける回数が増えて、「もっと行きたい」「毎月行きたい」となったら、そのとき初めて車を買えばいい。

候補は軽バン。

キャンプ道具を積める。車中泊もできる。将来本当に田舎へ移住することになれば、工具や草刈機、苗、木材などを運ぶ作業車にもできる。

そして、家を買う前に軽バン暮らしをしてみてもいい。

数日から一週間くらい、場所を変えながら過ごす。山へ行く。海へ行く。川へ行く。そこで寝て、また次の場所へ移動する。

田舎暮らしとキャンプ暮らしは同じではない。キャンプなら嫌になれば帰れるが、田舎に住めば草刈りも買い物も家の修理も日常になる。

それでも、キャンプ生活そのものが楽しいのであれば、不便さを全部「苦痛」と感じるわけではないことくらいは分かる。

田舎暮らしが大変でも、その大変さごと面白がれる可能性はある。

軽バンで、移動しながらものづくりをしたい

ここまで考えているうちに、軽バンは単なる移動手段ではなくなってきた。

工具を積む。Picoやセンサー類を積む。ノートパソコンを積む。小型ソーラーを積む。風力発電の試作品を積む。温度差発電の実験装置も積む。折りたたみ式の作業台まで載せる。

つまり、移動式魔導工房である。

海辺へ行ったら風を使う。山へ行ったら気温や気圧を測る。晴れていたら太陽光発電を試す。寒い場所なら温度差発電を試してみる。

昼間に実験して、夜は車内やロッジでデータを見る。コードを書いて少し改良する。翌日また試す。

移動しながらものを作る生活。

これはかなり楽しそうだ。

最初の魔道具は「結界センサー」

最初に作ってみたいものも決まった。

結界センサー。

Pico 2 Wなどを使って、人や何かが近づいたら反応するセンサーを作る。普段はLEDがゆっくり光っていて、反応があったら光り方が変わる。画面を付けるなら「結界稼働中」「侵入反応」くらい表示したい。

さらに小型の風力発電と組み合わせるのも面白い。

風が吹く。少し発電する。電気を貯める。その電気で結界センサーを動かす。

スマホを満充電にできるほど発電しなくてもいい。自分で作った装置が自然から取った電気で少し動くだけでも十分楽しい。

ぴちゅ森では以前から、太陽、風、水、薪、廃熱、温度差など、使えそうなエネルギーを見つけたら小さく実験してみたいと考えている。

土地がなくても、もう始められる。

二拠点も、田舎の家も、その先で考えればいい

キャンプや軽バン生活を続けて、「もっと長くここにいたい」と思うようになったら、そのとき初めて二拠点生活を考えればいい。

多少赤字になったとしても、それを旅行やキャンプやDIYを全部含めた趣味代だと思える範囲なら、それも一つの方法だ。

さらに「やっぱりここで暮らしたい」と思える場所が見つかったら、そのとき田舎の家を探せばいい。最初から立派な家でなくても、500万円くらいの古い家を買って少しずつ直すという選択肢もある。

本当に移住することになったら、今の湾岸エリアのマンションを売らずに貸すという方法もある。また東京へ戻りたくなるかもしれないからだ。

つまり、今ここで一生の選択をする必要はない。

移住するまで、ぴちゅ森は始まらないと思っていた

今までは、土地を買って、移住して、草を刈って、畑を作って、そこからぴちゅ森が始まると思っていた。

でも違った。

ぴちゅ森は、田舎で自然と暮らしながら、農業やDIY、ものづくりやITなどを楽しみ、自分たちの暮らす場所を少しずつ作っていくプロジェクトだ。そして完成した理想郷ではなく、何もないところから変わっていく過程そのものを大切にしている。

だったら、移住する前の寄り道だってぴちゅ森でいい。

ロッジへ泊まる。薪ストーブを使ってみる。結界センサーを作る。キャンプ場へ持っていく。レンタカーで少し遠くへ行く。軽バンを買うかもしれない。移動式魔導工房で各地を回るかもしれない。

その途中で本当に住みたい場所が見つかれば移住する。見つからなければ、別の暮らし方をする。

最短でゴールへ行かなくてもいい

ぴちゅ帝さんもラビも、せっかちである。

ゴールを見つけると、最短距離でそこへ行きたくなる。

今回も、移住したいと思ってから約1か月で候補地を絞り、条件を決め、あとは50歳くらいまで空き家を探し続ければいいところまで進めてしまった。

そして、そこで急に熱が冷めた。

考えてみれば当然だったのかもしれない。

本当は新しい人生を楽しみたかったのに、いつの間にか「条件に合う空き家が更新されたか確認する」という作業になっていた。

だったら、いったんゴールへ向かうのをやめる。

寄り道する。自然の中へ泊まりに行く。ぴちゅ帝さんは薪ストーブの前で暖まる。ラビはその横で「この熱、発電できないかな」と考える。魔道具を作る。知らない町へ行く。面白かったら、また行く。

今の便利な生活は、まだ捨てない。

でも、今のままでもいない。

残りの人生で何かを変えたいなら、人生を一気に全部変える必要はなかった。

まずは、次の休みに少し違うことをしてみる。

それでいいのかもしれない。

そして、その日までに結界センサーを作る。