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2026年8月9日。
那須の別荘地を、
かなり真剣に見るようになっていた。
物件サイトを開く。
森。
青空。
木漏れ日。
ウッドデッキ。
緑の庭。
窓の向こうには、
高原の景色。
いい。
ものすごくいい。
こんなところに住めたら、
夏は最高だろうな。
そう思う。
でも、
このころから、
私は写真を見ながら、
別のことを考えるようになった。
これ、冬はどうなるんだろう?
別荘地の物件写真、だいたい季節がいい
当たり前だけれど、
不動産の写真は、
物件が魅力的に見えるものが使われる。
新緑。
夏。
紅葉。
晴天。
雪が降った翌朝に、
道路が凍って、
車が動けません。
みたいな写真は、
普通載っていない。
なので、
夏の写真だけ見ていると、
別荘地暮らしは、
ものすごく優雅に見える。
朝は鳥の声。
窓を開けると涼しい風。
昼はデッキでコーヒー。
夜は薪ストーブ。
いい。
私も、
それがやりたい。
でも。
私たちが探しているのは、
夏だけ使う別荘ではない。
一年中住む家だった。
「雪が降る」は分かっている
那須。
高原。
標高も高め。
冬は寒い。
雪も降る。
それは、
最初から分かっていた。
だから、
「雪が降るかどうか」
ではなく、
その次を見る必要がある。
**雪が降ったあと、
普通に生活できるのか。**
ここが大事だった。
家の前の道路は?
除雪される?
何時ごろ?
どこまで?
坂は?
日陰は?
凍ったら?
そう考え始めると、
見る場所が、
家から道路へ移っていった。
「除雪あり」の一言では足りない
物件情報に、
「除雪あり」
と書いてある。
最初なら、
安心していたと思う。
でも、
今度は疑問が出る。
どこを除雪するの?
別荘地のメイン道路だけ?
枝道も?
家の前まで?
行き止まりの奥まで?
駐車場の入口は?
管理道路はやってくれても、
敷地内は当然自分たち?
ここ、
かなり重要。
幹線道路だけ除雪されても、
自宅から幹線道路まで200mが雪のままなら、
車は出せない。
「除雪あり」
便利な四文字。
でも、
情報が足りない。
家の前まで除雪車は来るのか
別荘地の地図を見ると、
メインの道路から、
細い枝道が伸びていることがある。
その先に、
また細い道。
さらに、
行き止まり。
そして、
その奥に家。
夏に見ると、
最高。
車もほとんど来ない。
静か。
森の奥。
理想のポツン感。
でも冬。
**除雪車、
ここまで来る?**
急に、
ロマンが現実へ戻ってくる。
私は、
行き止まり区画がかなり好きだった。
静かだから。
でも、
「行き止まり」は、
除雪車から見ても、
行き止まりである。
Uターンできる?
大型車が入れる?
ここも確認が必要になった。
急坂は、夏と冬で別物
さらに、
坂。
夏なら、
多少急でも、
普通に車で上れる。
むしろ、
高台の家は、
眺望が良かったりする。
でも、
雪や凍結が加わると、
話が変わる。
急坂。
日陰。
カーブ。
そこに氷。
想像しただけで、
怖い。
私は運転しない。
だから余計に、
「夫が運転できれば大丈夫」
だけでは済ませたくなかった。
タクシーは来る?
宅配は来る?
救急車は?
大雪の日は?
自分たち以外の車も入れる道路か。
これも、
定住なら重要だった。
北向きの道、木陰の道も気になる
同じ別荘地でも、
道路環境は違う。
日が当たる場所。
ほとんど日陰の場所。
谷側。
山側。
木が密集している道。
開けている道。
冬のことを考えると、
雪の量だけではなく、
雪や氷がどれだけ残るか
も気になる。
昼間に少し溶ける。
夜に凍る。
翌朝、
またつるつる。
そんなこともありそう。
そう考えると、
夏に、
「木がいっぱいで素敵!」
と思った場所が、
冬には、
「日が当たらなくて怖い」
になる可能性もある。
森、
季節によって顔が違う。
別荘地は「標高」だけ見ても足りない
このころ、
私は標高も、
かなり見るようになっていた。
標高600m。
700m。
900m。
夏は、
高いほど涼しそう。
でも。
冬の道路となると、
単に標高だけでは決まらない。
同じ700mでも、
南向きの緩い道路。
北向きの急坂。
全然違う。
つまり、
見るべきなのは、
標高+道路+方角+坂。
確認項目、
また増えた。
冬に一度見に行くのが一番いいのでは?
ここまで考えると、
結局、
こうなる。
冬に現地を見るのが一番では?
夏の別荘地は、
どこも素敵に見える。
でも、
雪の日。
寒波の日。
道路が凍った朝。
そのときどうなるか。
そこを知りたい。
もちろん、
毎年同じ雪ではない。
でも、
少なくとも、
「この道なら冬でもいけそう」
「ここはちょっと怖い」
という感覚は分かる。
物件見学。
春夏秋だけでなく、
冬も必要なのかもしれない。
田舎移住、
一年で決める理由が、
どんどん増えていく。
Googleマップを見る目も変わった
現地に行けないとき。
地図を見る。
ストリートビューを見る。
以前なら、
周囲の景色を見ていた。
森がある。
家が少ない。
眺望がいい。
でも今は、
道路。
カーブ。
坂。
幅。
側溝。
日陰。
行き止まり。
そういうところを見る。
地図を見ながら、
「ここ、雪の日に曲がれる?」
とか考える。
完全に、
夏の移住妄想から、
冬の道路シミュレーションへ進化していた。
「冬は出かけなければいい」は無理だった
一瞬、
考えたこともある。
雪の日は、
家にいればいいのでは?
仕事は家でできる。
食料を買っておけばいい。
ネットもある。
数日くらいなら、
引きこもれる。
でも、
ずっとは無理。
病院。
買い物。
犬。
宅配。
何かあったとき。
やっぱり、
道路は必要。
**「出なくていい暮らし」ではなく、
「必要なら出られる暮らし」**
が欲しかった。
私が欲しいのは、雪国チャレンジではない
雪のある暮らし。
見る分には、
とても好き。
庭が白くなる。
木に雪が積もる。
薪ストーブ。
温かいコーヒー。
最高。
でも、
雪との戦いを始めたいわけではない。
毎朝、
雪かき。
道路の凍結。
車が出ない。
水道管が心配。
それを、
移住のメインイベントにはしたくない。
だから、
冬があることは受け入れる。
でも、
冬が生活を支配する場所までは行かない。
だんだん、
そんな基準ができてきた。
夏の快適さと、冬の暮らしやすさ
ここでも、
また同じ問題に戻る。
標高を上げれば、
夏は涼しい。
でも、
冬は厳しくなる。
低くすれば、
冬は楽になる。
でも、
夏は暑くなる。
だったら、
どこで折り合う?
私は、
その中間を探していた。
夏は、
東京よりかなり涼しい。
冬は、
雪が降っても、
生活が止まりにくい。
そのあたり。
後に、
標高600〜800mくらいが、
かなり気になるようになるのも、
たぶんこの延長だった。
物件サイトに欲しい写真
このころ、
私は思った。
物件サイト。
夏の庭。
リビング。
キッチン。
お風呂。
もちろん見たい。
でも。
真冬の前面道路の写真も載せてほしい。
積雪時。
除雪後。
朝8時。
これ、
定住者には、
ものすごく重要だと思う。
「眺望良好」
より、
「1月の朝、普通に車出せます」
のほうが、
場合によっては強い。
別荘地を見るなら、家より先に道路を見る
少し前まで、
私は物件を見ると、
まず家を見ていた。
かわいい。
広い。
薪ストーブ。
ウッドデッキ。
庭。
でも、
だんだん、
順番が変わった。
道路。
坂。
除雪。
そのあと、
家。
どれだけ素敵な家でも、
冬に出入りできなかったら、
定住には向かない。
結局、
**暮らしを支えるのは、
家だけではない。**
家へ続く道路も、
生活の一部だった。
夏の写真に、冬を想像する
こうして、
物件サイトを見るとき、
私は、
緑の写真の上に、
勝手に雪を積もらせるようになった。
この道路に、
20cm積もったら?
この坂が、
凍ったら?
このカーブ、
大丈夫?
この木陰、
雪残らない?
そして、
それでも、
「ここなら暮らせそう」
と思える物件を探す。
別荘地選び。
夏だけ見ていたら、
たぶん、
分からなかった。
**一年中住むなら、
いちばん厳しい季節を想像する。**
8月9日。
真夏の東京で、
私はずっと、
那須の雪道のことを考えていた。
暑い。
でも頭の中は、
凍結していた。



