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前日まで、私は那須で家を建てるなら、
どれくらいお金がかかるのか。
どんな工務店に頼めばいいのか。
そんなことを調べていた。
そして翌日。
とうとう、
「じゃあ、実際どんな家に住みたい?」
というところまで来た。
中古住宅を探していたはずなのに、
いつの間にか、
自分の家の間取りを考えている。
移住計画というものは、
進んでいるのか、
迷走しているのか、
だんだん分からなくなってきた。
まず、平屋がいい
この頃、
かなり惹かれていたのが平屋だった。
夫婦二人。
犬と猫。
家で仕事をする。
だったら、
わざわざ二階建てにしなくてもいいのでは?
階段がなければ、
犬猫にも楽。
年を取ってからも楽。
掃除も移動も、
全部一階で済む。
そして何より、
庭と家をつなげやすい。
森の中に、
横に広がる木の平屋。
大きな窓。
その向こうには庭。
……。
もう絵が見えていた。
延床150〜160㎡くらいを想定する
当時考えていたのは、
延床150〜160平方メートルくらいの平屋。
かなり広い。
東京のマンション感覚なら、
びっくりする広さである。
でも。
那須で広い土地ばかり見ていると、
感覚がおかしくなる。
2000㎡の土地を想像したあとでは、
150㎡の家が、
「まあ、これくらいかな」
に見えてくる。
完全にバグっている。
家の真ん中には、大きなLDK
家の中心は、
広いLDK。
ここはかなり重要だった。
夫婦で過ごす。
犬もいる。
猫もいる。
仕事の合間に休む。
ごはんを食べる。
薪ストーブを見る。
家の中でいちばん長く過ごす場所だから、
ここは広くしたい。
そして、
大きな窓をつける。
窓の向こうには森。
昼は木漏れ日。
夜は真っ暗な森。
冬はその前で薪ストーブ。
はい、優勝。
この頃にはもう、
LDKと薪ストーブは、
ほぼセットになっていた。
薪ストーブは、家の中心へ
数日前まで、
薪ストーブは
「森の家にあると格好いい暖房器具」
だった。
でもこの頃になると、
もう少し意味が変わっていた。
冬の家の中心。
火を見る場所。
犬や猫が集まる場所。
人も自然とそこへ集まる。
だから、
壁際に追いやるより、
家の中心で存在感を出したい。
そんなことまで考え始めていた。
薪ストーブ一台から、
家全体の間取りが影響を受けている。
恐るべし。
夫婦それぞれに仕事部屋が欲しい
私たちは、
家で過ごす時間が長い。
そして、
仕事も家でする。
だから、
「寝室とLDKさえあればいい」
という家では足りない。
私は原稿を書く。
夫にも自分のスペースがいる。
だったら、
夫婦それぞれに仕事部屋を作ろう。
別々の場所で仕事をして、
ごはんになるとLDKに集まる。
仕事と生活を、
家の中で少し分ける。
これはかなり現実的な希望だった。
移住したら、
家そのものが職場になる。
だから、
住みやすい家=働きやすい家
でもある。
ゲストルームも欲しい
さらに、
ゲストルーム。
せっかく那須に住むなら、
家族や友人が来るかもしれない。
泊まれる部屋が一つあれば便利。
しかも、
普段は別の用途にも使える。
客間。
予備室。
作業部屋。
将来、
何か別の使い方もできる。
この頃から、
私は家を
「今の二人だけにぴったり」
ではなく、
あとから使い方を変えられる家
として考えるようになっていた。
収納は、多いほうがいい
田舎暮らしを想像すると、
物が増える。
薪ストーブ用品。
犬用品。
猫用品。
庭仕事の道具。
長靴。
アウトドア用品。
冬物。
工具。
東京のマンション暮らしより、
確実に増えそうだった。
そこで、
土間収納。
納戸。
ウォークインクローゼット。
パントリー。
そういうものも欲しくなる。
収納は正義。
このあたりは、
夢というより、
かなり現実的である。
犬は、家からそのまま庭へ
そして、
犬。
これは絶対だった。
リビングやデッキから、
そのまま庭へ出られる。
朝、
窓を開ける。
犬が走っていく。
夜、
呼ぶ。
戻ってくる。
これをやりたい。
だから、
犬の庭は
「敷地のどこかに作る」
ではなく、
家と直接つながっていること
が重要だった。
この頃描いていたプランでも、
家の前に芝生のドッグランを置いていた。
猫には、キャットガーデン
犬だけではない。
猫もいる。
でも、
猫を森に自由放牧するわけにはいかない。
そこで出てきたのが、
キャットガーデン。
家の一部から直接出られる、
囲われた猫専用の外空間。
日向ぼっこ。
風。
草。
鳥を見る。
でも外には逃げない。
人間から見ても、
ちょっと楽しそう。
気がつけば、
寝室の横にキャットガーデンを付けるような案まで描いていた。
猫、
かなり待遇がいい。
家の中だけ考えていたはずなのに
ここまで来ると、
もう間取りだけでは済まなくなる。
犬の庭はどれくらい?
キャットガーデンはどこ?
玄関から駐車場までどう歩く?
デッキはどちら側?
窓から何が見える?
気づけば、
家の外側まで考えている。
つまり、
家を一軒描くと、
必ずその周囲が必要になる。
建物だけ切り離して考えることができなくなった。
家は「箱」ではなく、動線だった
この頃、
初めてちゃんと考えた気がする。
家というものは、
部屋の数ではなく、
どう動くか
なのだと。
起きる。
犬を庭に出す。
朝ごはん。
仕事をする。
昼に庭へ出る。
買い物から戻る。
荷物をパントリーへ入れる。
冬は薪を運ぶ。
夜は薪ストーブの前に集まる。
そういう毎日の動きが、
間取りになる。
それまで私は、
家を写真でしか見ていなかった。
でも、
自分で間取りを考えるようになって、
初めて
「暮らしから家を作る」
という感覚が出てきた。
そして、家の外にも欲しいものが増えていく
家の間取りができてくると、
今度は敷地全体が気になり始めた。
犬の庭。
猫の庭。
畑。
薪棚。
駐車場。
作業スペース。
そして、
雑木林。
せっかく2000㎡くらいあるなら、
全部を芝生にする必要もない。
森を残す。
その中に道を作る。
犬が一周できるコースを作る。
畑も置く。
……。
もう完全に、
家の間取りではない。
敷地計画である。
朝は平屋、夜には2000㎡マスタープラン
この日の面白いところは、
一日の中で妄想がどんどん大きくなっていることだった。
最初は、
「どんな平屋がいいかな」
だった。
それが、
犬の庭。
猫の庭。
畑。
雑木林。
周回コース。
駐車場。
と増えていく。
そして夜には、
2000㎡の土地全体を使ったマスタープラン
を作っていた。
朝と夜で、
話のスケールが違う。
私が欲しかったのは、家だけではなかった
この頃になると、
ようやく自分でも分かってきた。
私は、
素敵な家が欲しいだけではない。
犬が走る。
猫が外を見る。
畑で何か育てる。
木がある。
鳥が来る。
薪を積む。
仕事をする。
そういうこと全部が、
一つの場所にある暮らしが欲しい。
つまり、
欲しいのは建物ではなく、暮らしそのものだった。
家は、
その中心にあるだけ。
そして、2000㎡を丸ごと描き始める
こうして、
家の間取りを描いた私は、
次に、
家の外側まで描き始めた。
2000㎡。
家。
前面ドッグラン。
キャットガーデン。
畑。
雑木林。
犬の周回コース。
薪を置く場所。
駐車場。
この頃はまだ、
そんな場所に名前はなかった。
でも今振り返ると、
ぴちゅ森の原型みたいなものは、もうここにあった。
次は、
家ではなく、
2000㎡全部を使って暮らしを描いた日の話。
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