目次目次を閉じる
豊洲を残すなら、地方の家は安くてもいい?
豊洲のマンションをどうするか。
売るのか、貸すのか、それとも残すのか。
あれこれ考えているうちに、ひとつ思った。
豊洲を残すなら、移住先の家にそんなにお金をかけなくてもいいんじゃない?
東京にも戻れる家がある。
だったら地方では、もっと気軽に住める家を探してもいい。
そんなふうに、少しずつ考え方が変わってきた。
とりあえず、中古住宅を見てみよう
そこから私は、中古住宅を探し始めた。
まだこの頃は、
「絶対ここに住む!」
という場所が決まっていたわけではない。
東京からそれほど遠くなくて、自然があって、家が広くて。
できれば犬たちものびのび暮らせるところ。
そんな条件で、あちこち物件サイトを眺めていた。
そして、ある地域が目に入った。
那須だった。
えっ、那須ってこんなに安いの?
最初に驚いたのは、とにかく家が広いことだった。
ある物件は、LDKだけで約26.8畳。
しかも吹き抜けがあり、大きなウッドデッキまで付いている。
2階には8畳の洋室。
さらにフリースペースまである。
写真を見る限り、
「古い家をとりあえず安く売っています」
という感じでもない。
ちゃんと人が暮らせそうな家だった。
キッチンも広い。
お風呂もある。
トイレもある。
当たり前なのだけれど、東京の物件ばかり見てきた私には、その当たり前が妙にまぶしかった。
東京の不動産価格に目を焼かれていた
豊洲で暮らしていると、不動産価格の基準がおかしくなる。
70平方メートル台のマンションが何千万円。
いや、最近では普通に億が見えてくる。
そんな世界を見続けていたあとに、
森の中に建つ広い一戸建てを見る。
しかもウッドデッキ付き。
そして価格を見る。
私は思った。
……え?
もう一度見る。
……安くない?
いや。
正確には、
東京がおかしいのか?
分からなくなった。
家だけじゃなく、森までついてくる
さらに衝撃だったのが、家の周りだった。
窓の外には木々がある。
道路の向こうにマンションが建っているわけでもない。
ウッドデッキから見えるのは、ほぼ森。
庭というより、
「家が森の中に置いてある」
という感じだった。
私はもともと、海が好きだった。
移住するなら海の近く。
そんなことを考えていた時期もある。
ところが、物件写真を見ているうちに、
木漏れ日の中に建つ家というものが、妙に気になり始めた。
そして、写真の隅に妙なものを見つける
LDKの写真を眺めていたときだった。
部屋の隅に、何かある。
黒っぽいというか、グレーっぽいというか。
四角くて、煙突が伸びている。
薪ストーブだった。
この時点では、まだ特別な思い入れはない。
「ああ、別荘っぽいな」
くらいだったと思う。
薪ストーブなんて、それまでの私にとっては、
山小屋とか、
テレビの田舎暮らし番組とか、
そういう場所にあるものだった。
自分の生活とは、まったく関係のない設備だった。
……この時点では。
「那須 中古住宅」で検索する日々が始まった
この物件をきっかけに、私は那須の中古住宅をどんどん見るようになった。
すると出てくる。
広い家。
森の家。
吹き抜けの家。
ウッドデッキの家。
薪ストーブのある家。
そして、東京ではちょっと考えられない価格の家。
何これ。
那須、楽しすぎる。
気がつけば私は、
「移住先を探している」
というより、
那須の物件を見ること自体を楽しみ始めていた。
ここで私は、まだ知らなかった
この頃の私は、まだ普通の中古住宅を見ていた。
一戸建てを買って、少し直して、のんびり暮らす。
それくらいの気持ちだった。
ところが。
那須の物件を調べていると、検索結果にある言葉が頻繁に出てくる。
「別荘」
別荘?
私の人生とはあまり縁のなさそうな言葉である。
でもまあ。
見るだけなら無料だ。
そう思ってクリックした。
これがいけなかった。
このあと私は、
那須高原の別荘沼に、見事に落ちることになる。
そしてそこで、
私の人生にほとんど存在していなかった
「薪ストーブが欲しい」
という欲望まで生まれてしまうのである。
移住計画は、少しずつ森の奥へ入り始めていた。
🌲🔥



