本文へ移動
Season 0|移住準備編Episode 01

貸別荘? キャンピングカー? 「移住」の形がどんどんわからなくなる

都内から出て暮らす。

そんな生き方も選べるんだ。

前回のマンション内見をきっかけにそう気づいた私は、さっそく「じゃあ、どこに住む?」を考え始めた。

夫は静岡市出身だ。

以前から、

「そのうち静岡に帰って、土いじりでもしたいなあ」

なんて言っていた。

だったら静岡もありかもしれない。

ただ、秋田出身の私には静岡の土地勘がまったくない。

静岡と聞いて、ぱっと頭に浮かんだのは――

伊豆。下田。海。温泉。リゾート。

かなり雑なイメージだった。

さっそく物件サイトを開いた。

予算?

この時点では、そんなものはない。

どうせ見るだけなので、予算度外視である。

海が見える家。

森に囲まれた家。

広いウッドデッキのある別荘。

「うわ、ここいい!」

「こっちも景色すごい!」

物件を眺めているだけで楽しかった。

ところが、詳細を読んでいくと、知らない言葉がどんどん出てくる。

傾斜地。
擁壁。
私道。
土砂災害警戒区域。

海が見える。

山が見える。

景色がいい。

そういう土地には、そういう景色になった理由もあるらしい。

もちろん全部が危険というわけではない。

でも、地震や豪雨が起きたときのことを考え始めると、土地勘のない素人が景色だけで飛びつくには、なかなか難しそうだった。

「だったら、買わなきゃいいのでは?」

次に考えたのが賃貸だった。

景色のいい場所に住みたい。

でも土地のリスクまでは背負いたくない。

だったら借りればいい。

理屈としては、とても合理的だ。

ところが物件を見ても、なぜかあまり心が躍らなかった。

都内のマンションを手放して、今度は地方の賃貸住宅のルールの中で暮らす。

それも何か違う気がした。

ペットのアンケートから始まった話なのに、また別の場所で「これはできません」「あれはできません」と言われながら暮らすのも、なんだかなあ。

そこで見つけたのが、

貸別荘

という選択肢だった。

調べてみると、別荘を一週間、一か月、あるいはもっと長い期間借りて暮らす方法がある。

「これ、いいんじゃない?」

いきなり移住する必要はない。

まずは住んでみればいい。

夏だけ涼しいところへ行ってもいい。

冬だけ暖かいところへ行ってもいい。

気に入った土地があれば長く滞在すればいいし、合わなければ別の場所へ行けばいい。

住む場所を一つに決めなくてもいい。

この発想は、私にはかなり新鮮だった。

私の中で「別荘」といえば軽井沢だったので、さっそく軽井沢の長期滞在物件を探した。

すると「バケーションレンタル」という、なんだか急に人生がおしゃれになったような名前の物件がたくさん出てきた。

新軽井沢エリア。

ペット応相談。

オフシーズンなら月30万円くらいから。

「30万円かあ。高いけど……数か月ならあり?」

などと眺めていると、ハイシーズンの料金を見て目が止まった。

月100万円。

「…………」

さすが軽井沢。

夏になると家賃まで避暑地価格になるらしい。

年間を通して借りる必要はないとしても、夏に100万円を払うのはさすがにもったいない。

では、どうするか。

ここで普通なら、

「もっと安い場所を探そう」

となるはずなのだが、私たち夫婦はなぜか違う方向へ進んだ。

「夏だけキャンピングカーで旅すればいいんじゃない?」

なぜそうなる。

今振り返ってもよくわからない。

でも、この頃の私たちは新しい暮らし方を知ること自体が楽しくて仕方がなかった。

調べてみると、キャンピングカーにもいろいろある。

キャブコン。

トラックなどをベースに、その後ろへ大きな居住スペースを載せた、いわゆる「ザ・キャンピングカー」。

中で立てる。

ベッドもある。

トイレやシャワーまで付けられる。

バンコン。

ハイエースなどのバンをベースに、車内をキャンピング仕様にしたもの。

キャブコンより普通の車に近く、街中でも使いやすそうだ。

さらに、

軽キャン、軽バンコン。

軽自動車をキャンピング仕様にした小さなタイプまである。

知らない世界だった。

そして知らない世界というものは、調べ始めるとたいへん危険である。

夫もすっかり乗り気になった。

キャンピングカーのYouTubeを見た。

車内のベッドを見た。

キッチンを見た。

収納を見た。

北海道を走っている動画を見た。

「これで北海道一周したら楽しそう!」

「犬猫も一緒に連れて行ける!」

夢はどんどん膨らんだ。

東京ビッグサイトで開催されるキャンピングカーショーにも行こうとした。

そして気づけば、

1000万円クラスのキャブコンを見ていた。

少し前まで、

「ペット可のマンションに引っ越そう」

と言っていただけの夫婦である。

人生、どうしてこうなった。

しかも私はペーパードライバー。

大きなキャンピングカーなんて、おそらく運転できない。

つまり完全に夫頼みだ。

それでも当時はかなり盛り上がっていて、一歩間違えれば勢いで買っていたかもしれない。

今考えると恐ろしい。

しかし、犬や猫と私たち夫婦が長期間キャンピングカーで暮らすところまで想像してみると、だんだん現実が見えてきた。

狭い。

荷物も多い。

仕事もしなければならない。

犬猫の居場所も必要だ。

そもそも私たちは、キャンピングカーに住みたいわけではない。

ここでようやく、それに気づいた。

私たちがしたかったのは、

いろいろな土地で暮らしてみることだった。

だったらキャンピングカーを所有しなくてもいい。

必要なときだけ借りてもいい。

移動にはレンタカーを使ってもいい。

犬猫がいるなら、ペットタクシーという方法だってある。

家だって同じだ。

いきなり買わなくてもいい。

まず借りればいい。

一か月でも三か月でも住んでみて、その土地が好きかどうか確かめればいい。

こうして今度は、

「所有しない旅暮らし」

という案が浮上した。

夏は涼しい場所。

冬は暖かい場所。

春と秋は東京。

たとえば夏は長野や東北。

冬は伊豆や房総。

もっと遠くまで行くなら、沖縄もいい。

Airbnbを開いて、

「正月明けから3月いっぱいまで沖縄だったらいくら?」

なんて調べていた。

三か月で120万円くらいの物件を見つけて、

「高いなあ」

と言いながらも、

「でもホテル暮らしだと思えば……」

などと考える。

金銭感覚まで少しおかしくなり始めていた。

それでも楽しかった。

ずっと住んできた東京を出てもいい。

一つの場所に定住しなくてもいい。

家を買わなくてもいい。

車を持たなくてもいい。

夏と冬で住む場所を変えてもいい。

それまで私の中で「移住」とは、

東京の家を引き払い、地方に家を買って、そこへ住み続けること

だった。

でも調べれば調べるほど、いろんな形があることを知った。

二拠点生活。

季節移住。

長期滞在。

貸別荘。

バケーションレンタル。

キャンピングカー。

そして、所有しない旅暮らし。

選択肢が増えれば増えるほど自由になった。

そして同時に、

何をしたいのか、わからなくなった。

ただ一つだけ確かなことがあった。

便利な東京暮らしを捨ててでも、

私は一度、どこか知らない土地で暮らしてみたくなっていた。

ペットを飼いたい。

そこから始まった話は、わずか数週間でずいぶん遠いところまで来てしまった。

そして、この迷走はまだ終わらない。

むしろ――

ここからが本番だった。

記事まとめ 大きく6トピック✨️

  • 静岡・伊豆方面の物件探し開始
    • 夫の地元が静岡
    • 伊豆・下田などリゾート地を見始める
    • 景観はいいけど、傾斜地・擁壁・私道・土砂災害などの難しさに気づく
  • 「買う」から「借りる」へ発想転換
    • 地方の賃貸も検討
    • でも普通の賃貸にはあまりワクワクしない
    • そこで貸別荘・バケーションレンタルを発見
  • 季節ごとに住む場所を変える案
    • 夏は涼しい場所
    • 冬は暖かい場所
    • 軽井沢の長期滞在物件を調べる
    • ハイシーズン月100万円に驚く
  • キャンピングカー熱が爆発
    • キャブコン・バンコン・軽キャンを知る
    • YouTubeを見まくる
    • キャンピングカーショーにも行きかける
    • 1000万円クラスのキャブコンまで欲しくなる
  • でも「車に住みたいわけじゃない」と気づく
    • 犬猫+夫婦では長期車中泊は厳しそう
    • 本当にやりたいのはキャンピングカー生活ではなく、
      いろんな土地で暮らしてみること
    • 所有せず、必要なときだけ借りればいいのでは?となる
  • 「移住=定住」ではないと知る
    • 二拠点
    • 季節移住
    • 貸別荘
    • Airbnb長期滞在
    • キャンピングカーレンタル
    • 東京に戻る暮らし
    • 選択肢が増えすぎて、逆に何をしたいのかわからなくなる