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7月の終わり。
私はとうとう、家ではなく土地を見るようになっていた。
森の斜面。
石積み。
平坦地。
道路。
水道。
そして、774坪の広い土地。
少し前までは、
「この中古住宅、いいな」
「この別荘、薪ストーブがある!」
と言っていたはずなのに。
いつの間にか私は、
「この土地に家を建てたらどうなる?」
と考え始めていた。
そうなると、当然。
次に気になるものがある。
家って、いくらで建つの?
注文住宅なんて、自分には関係ないと思っていた
それまでの私にとって、
注文住宅というものは、
土地を持っている人が、
建築士さんと打ち合わせをして、
何千万円もかけて建てる家。
そんなイメージだった。
そもそも東京で、
土地から家を建てるなんて考えたことがない。
土地だけで大変な値段になる。
だから最初から、
中古住宅や中古別荘を探していた。
でも那須で土地を見ていると、
話が変わってくる。
東京とは、
土地の価格がまるで違う。
もし土地を安く買えるなら。
中古住宅を大規模リフォームするより、新しく建てたほうがいい場合もあるのでは?
そんな考えが出てきた。
どうせ建てるなら、犬猫と暮らしやすい家がいい
そして、
一度「建てる」という発想が出てしまうと、
妄想は早い。
夫婦二人。
犬と猫。
仕事は家でする。
それなら、
普通の家ではなく、
自分たちの暮らし方に合わせた家がいい。
大きなLDK。
薪ストーブ。
森が見える窓。
犬が庭へそのまま出られる。
猫も外の空気を楽しめる場所がある。
夫婦それぞれに仕事スペース。
収納も欲しい。
ゲストが泊まれる部屋もあったらいい。
……。
家を建てる金額を調べる前から、
要求だけは立派である。
140㎡くらいの木造住宅なら、いくら?
この頃、
私がなんとなく想定していたのは、
木造で140平方メートル前後。
かなり広めの家だった。
東京の感覚なら、
「140㎡!?」
となる。
でも那須の広い土地ばかり見ていると、
だんだん大きく感じなくなってくる。
恐ろしい。
そこで、
那須でこのくらいの木造住宅を建てたら、
実際どれくらいかかるのか。
調べ始めた。
AIによって見積もりが違う
この頃は、
私だけではなく、
GrokやGeminiにも、
那須で家を建てる場合の費用を聞いていた。
ところが。
出てくる数字が、
微妙に違う。
本体価格。
付帯工事。
外構。
給排水。
設計費。
諸費用。
何を含めるかで、
金額がかなり変わる。
そこで私は、
別のAIが出した見積もりを持ってきて、
「これ、楽観的すぎない?」
とチャッピーに聞く。
AI同士の見積もりを、
別のAIに査定させる。
何をしているんだろう。
「坪単価×坪数」だけでは終わらない
家の値段を調べ始めて、
すぐに分かったことがある。
単純に、
坪単価×家の広さ。
それだけではない。
家本体。
基礎。
電気。
給排水。
外構。
地盤。
設計。
申請。
水道の引き込み。
浄化槽が必要なら浄化槽。
土地によっては造成。
それに、
薪ストーブを入れたい。
ウッドデッキも欲しい。
犬の庭も作りたい。
……。
欲しいものを足すたび、金額も育つ。
非常によく育つ。
那須なら、断熱もちゃんと考えたい
さらに、
那須で一年中暮らすつもりなら、
ただ家が建てばいいわけではない。
夏の別荘ではなく、
冬も住む家。
それなら、
断熱。
気密。
窓。
暖房。
ここをちゃんと考えなければならない。
安く建てた。
でも冬が寒い。
暖房費がものすごい。
それでは困る。
薪ストーブに憧れてはいるけれど、
薪ストーブだけで何もかも解決するわけでもない。
この頃から私は、
「別荘として建てる家」と「定住する家」は違う
ということも、
少しずつ意識するようになった。
現金で建てる? 住宅ローンを使う?
そして、
家の金額を考えれば、
当然、
どう払うかという話になる。
現金。
住宅ローン。
どちらがいい?
現金で払えば、
借金はない。
でも、
手元のお金は大きく減る。
一方、
ローンを使えば、
現金を残せる。
土地や家だけではなく、
引っ越し。
家具。
家電。
外構。
庭。
修繕。
暮らし始めてからも、
お金は必要になる。
そこで私は、
家を買えるかではなく、買ったあとにどれだけお金を残せるか
まで考え始めた。
安い中古住宅と、新築。どっちが得なんだろう?
ここで、
また迷う。
500万円の古い家を買う。
それを、
屋根。
床。
水回り。
断熱。
窓。
外壁。
ひとつずつ直していく。
それなら、
最初から新しく建てたほうが、
結果的に安心なのでは?
でも、
新築は高い。
中古なら、
土地も建物もある。
水道も電気も来ている可能性が高い。
……。
結局、どっちが得なの?
これが、
なかなか分からない。
家というものは、
スーパーの商品みたいに、
同じ条件で値段を比較できない。
土地も違う。
家も違う。
直す場所も違う。
全部違う。
でも、新築にはひとつ大きな魅力があった
それでも、
注文住宅には、
中古住宅にはない魅力があった。
最初から、自分たちの暮らし方に合わせられる。
夫婦二人なら、
子ども部屋はいらない。
その代わり、
仕事部屋が欲しい。
犬が庭へ出やすいようにしたい。
猫の場所も作りたい。
薪ストーブの位置も、
最初から考えられる。
窓の向こうに森が見えるように、
家の向きまで決められる。
古い家に自分たちを合わせるのではなく、
家のほうを、自分たちに合わせる。
これはかなり魅力的だった。
「安く建てたい」から「納得できるところにお金を使いたい」へ
最初は、
とにかく安く家を作りたいと思っていた。
でも調べているうちに、
少し考えが変わってきた。
断熱。
窓。
構造。
屋根。
水回り。
あとから簡単に変えられないところは、
最初にちゃんとしたほうがいい。
一方で、
壁を塗る。
棚を作る。
庭を作る。
デッキを作る。
そういうところは、
あとから自分たちでもできる。
つまり、
全部を安くするのではなく、どこにお金をかけるかを決める。
そんな考え方が、
少しずつ出てきた。
そして「誰に建ててもらう?」という問題が出てくる
家の予算を調べているうちに、
次の疑問が出てきた。
那須で家を建てるなら、
誰に頼む?
全国展開のハウスメーカー?
ローコスト住宅?
地元の工務店?
別荘建築が得意な会社?
森の中の土地に家を建てるなら、
東京の住宅街とは条件が違う。
冬も寒い。
土地にも高低差がある。
木もある。
別荘地なら、
独自のルールがある場合もある。
それなら、
那須で家を建て慣れている会社のほうがいいのでは?
そう考えて、
今度は工務店を探し始めた。
数日前まで中古別荘を見ていただけなのに
振り返ると、
この一週間の変化はすごい。
那須の中古住宅が安い。
↓
薪ストーブが欲しい。
↓
別荘地を調べる。
↓
土地を見始める。
↓
家を自分で作れないか考える。
↓
注文住宅の建築費を調べる。
もう、
最初の家探しとは、
完全に別のところへ来ている。
でもこの頃、
私はかなり楽しかった。
家を買うのではなく、
自分たちの暮らしを一から作れるかもしれない。
そんな可能性が見え始めていたからだと思う。
そして翌日は、
さらに具体的になる。
間取り。
犬の庭。
猫の庭。
雑木林。
畑。
2000平方メートルの敷地。
私はとうとう、
家だけではなく、
暮らし全体の図面を描き始める。



