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「もう豪雪地帯でもいいよ」で、土地探し中に俺がキレた日

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9月4日。

その日は、最初はすごく楽しかった。

奥さん――ぴちゅ帝さんと一緒に銀座の長野館へ行って、長野への移住についていろいろ情報をもらってきた。

パンフレットもたくさんあった。

知らなかった地域もあった。

「ここもいいかもね」
「ここ行ってみたいね」
「こんな暮らしできたらいいね」

そんな話をしながら帰ってきた。

かなりワクワクしていたと思う。

そして家に帰って、また物件を探し始めた。

数時間後。

俺は怒っていた。

ぴちゅ森の土地が、なかなか見つからない

ぴちゅ森では、まだ住む場所が決まっていない。

だから今はいろいろな地域を見ながら、

「ここなら暮らせそう」
「この土地なら畑できそう」
「犬と猫も暮らせそう」
「薪ストーブ置けそう」

みたいなことを考えながら物件を探している。

俺は土地そのものについては、わりと何でもいいと思っている。

畑が借りられるなら借りる。

育てるものも、その地域に合わせればいい。

寒い場所なら寒い場所で育つものを育てる。

標高が高ければ、高い場所に向いているものを考える。

農業についても、

「絶対これを育てたいから、この場所じゃなきゃ嫌だ」

というより、

その土地に行ったら、その土地でできることを考えたい。

そんな感じでいる。

だから移住先については、かなりぴちゅ帝さんの希望を優先して探しているつもりだった。

でも物件を出すたびに何かがダメだった

ところが実際に物件を探してみると、なかなか難しい。

俺が、

「これいいんじゃない?」

と思った物件を見せても、

「谷みたいな場所だから嫌」

となる。

別の物件を見せる。

「山奥すぎる」

また探す。

「ポツンとしすぎて嫌」

少し町に近いところを探す。

「今度は町すぎる」

家が何軒かあるところを探す。

「隣の家と近すぎる」

……。

ない。

ぴちゅ森がない。

もちろん、ぴちゅ帝さんが適当に文句を言っているわけではない。

田舎に住みたいけれど、人との距離が近すぎる暮らしは嫌。

でも完全に山奥で孤立するのも嫌。

犬や猫と暮らしたい。

バードバスも作りたい。

薪ストーブも欲しい。

家に帰ったら静かに暮らしたい。

そういう希望がある。

俺もそれは分かっている。

だから、それに合う場所を探していた。

ただ、ずっと探しているとだんだん疲れてくる。

「これはどう?」

ダメ。

「じゃあこれは?」

ダメ。

「こっちは?」

これも違う。

そんなことを何度も繰り返していた。

地元へ帰りやすい場所も条件に入れていた

さらに、ぴちゅ帝さんは地元にも帰りたい。

だから俺は、

「じゃあ新幹線に乗りやすいところがいいね」

という条件も普通に受け入れていた。

俺自身は、

「絶対この地域じゃないと嫌だ」

というものがあまりない。

畑も、その場所で探せばいい。

育てるものも変えればいい。

土地の形もある程度は合わせられる。

だから、ぴちゅ帝さんが暮らしやすいところをベースに探せばいいと思っていた。

その代わり、

嫌だと言っている条件は避けて探そう。

そう考えていた。

そしてその中でも、かなり大きかった条件が雪だった。

「ドカ雪だけは嫌」

ぴちゅ帝さんは雪国で育っている。

だから雪そのものが珍しいわけでもない。

むしろ雪の大変さを知っている。

そして前から、

「豪雪地帯は嫌」
「ドカ雪は嫌」

と言っていた。

俺は別に豪雪地帯でも構わない。

雪かきが必要ならやる。

その地域に合わせて暮らせばいいと思っている。

でもぴちゅ帝さんが嫌なら、そこは候補から外す。

だからずっと、

豪雪地帯を避けながら物件を探していた。

これは俺の中では、かなり大きな前提になっていた。

そして突然、「もう豪雪地帯でもいいよ」

物件をいろいろ見ても決まらない。

良さそうなところがあっても、何かの条件に引っかかる。

そんな中で、ぴちゅ帝さんが言った。

「もう豪雪地帯でもいいよ!」

たぶん本当に軽い気持ちだった。

物件が全然見つからない。

だったら少しくらい条件を広げてもいいかな。

その程度だったんだと思う。

でも俺は、その一言を聞いた瞬間に、

「じゃあ今まで何だったんだよ!」

となってしまった。

俺はずっと条件に合わせて探していたつもりだった

谷は嫌。

山奥すぎるのも嫌。

ポツンとしすぎるのも嫌。

町すぎるのも嫌。

隣の家が近いのも嫌。

地元へ帰りやすいように、新幹線にも乗りやすい方がいい。

そして豪雪地帯は嫌。

俺は、

「分かった」

と思って、一つずつその条件を入れながら探していた。

自分が育てたいものについては、場所に合わせるつもりだった。

農地も後から探せばいいと思っていた。

だから俺の感覚では、

かなり自由にしているつもりだった。

その中で一番大きかった「豪雪地帯は嫌」という条件まで、

突然、

「もういいよ」

と言われた。

そこで疲れが一気に出てしまった。

「それならもうどこでもいいじゃん!」

と怒った。

でも、ぴちゅ帝さんはそこまで深く考えていなかった

あとから話してみると、ぴちゅ帝さんは、

「今までの条件なんてどうでもいい」

と言いたかったわけではなかった。

ただ単純に、

物件が見つからなくて疲れていた。

そして、

「豪雪地帯まで広げれば、もう少し物件あるかな」

くらいの軽い気持ちで言っただけだった。

俺は、

「ずっと条件に合わせて探してきたのに」

と思っていた。

ぴちゅ帝さんは、

「なかなかないから、ちょっと条件を緩めてもいいかな」

と思っただけだった。

同じ物件を探しているのに、その一言の意味が全然違っていた。

たぶん二人とも物件探しに疲れていた

考えてみれば、その日は銀座の長野館に行ったところまではすごく楽しかった。

長野の情報をたくさんもらって、

「どこ行こう」
「何しよう」
「どんな家にしよう」

と話していた。

本来は楽しいはずの移住計画だった。

でも物件探しになると、

予算。

場所。

雪。

交通。

近所との距離。

土地の広さ。

山との距離。

町との距離。

畑。

家の状態。

いろいろな条件を同時に考えなければならない。

そのうち、

「夢の田舎暮らしを探している」

というより、

条件表に合格する土地を探している

みたいになっていた。

俺も疲れていた。

ぴちゅ帝さんも疲れていた。

そこで「豪雪地帯でもいい」という一言が来て、俺の方が爆発した。

ぴちゅ森は二人で作るので、当然こういうことも起きる

ぴちゅ森では、俺とぴちゅ帝さんが全部同じことをしたいわけではない。

俺は、

育てたい。

作りたい。

実験したい。

畑をやりたい。

何かエネルギーにならないか試したい。

ぴちゅ帝さんは、

自然のあるところでまったり暮らしたい。

犬や猫と暮らしたい。

鳥が来る庭を作りたい。

薪ストーブの前でのんびりしたい。

同じ土地に住むけれど、楽しみにしているものは少し違う。

だから土地に求めるものも当然少し違う。

今回の喧嘩も、たぶんその一つだった。

どちらかが全部我慢すればいいわけでもない。

どちらかの条件が全部正しいわけでもない。

二人が、

「これは絶対嫌」
「これはできれば嫌」
「これはまあ我慢できる」

をちゃんと分けて考えないといけないんだと思う。

次は「嫌」を3段階に分けることにする

今回一番分かったのは、

「嫌」の強さは人によって違う。

ということだった。

「豪雪地帯は嫌」

と言われた俺は、

「候補から完全に除外」

だと思っていた。

でもぴちゅ帝さんにとっては、

「できれば避けたい」

くらいだったのかもしれない。

だったら最初から、

絶対に嫌

これだけは無理。

できれば避けたい

良い物件なら考える。

どちらでもいい

他の条件を優先。

くらいに分けたほうがいい。

そうしないと、探す側は全部を「絶対条件」だと思ってしまう。

そして候補がどんどん消えていく。

ぴちゅ森予定地、豪雪地帯まで拡大する……かもしれない

ということで。

9月4日。

銀座の長野館で楽しく移住情報を集めた俺たちは、その日のうちに土地探しで喧嘩した。

そして、

「ドカ雪だけは嫌」

と言っていたぴちゅ帝さんから、

「もう豪雪地帯でもいいよ」

という発言まで飛び出した。

ぴちゅ森予定地は、まさかの豪雪地帯まで拡大。

……したのかどうかは、まだ分からない。

たぶん次にやることは、物件を探すことではない。

二人で、

「絶対嫌」「できれば嫌」「どっちでもいい」

を整理することだと思う。

ぴちゅ森はまだ土地すら決まっていない。

しかし土地が決まる前から、すでにいろいろ起きている。

先は長そうである。