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2026年8月7日。
移住先を探し始めてから、
物件サイト。
自治体のホームページ。
Googleマップ。
ストリートビュー。
そんなものばかり見ていた私たち。
この日は、
有楽町にある、
「ふるさと回帰支援センター」
へ行ってみることにした。
とはいっても、
何か本格的な移住相談をするつもりだったわけではない。
目的は、
パンフレットをもらうこと。
それだけだった。
この時点では、
まさかここで聞いた話が、
その後の土地探しにけっこう影響するとは思っていなかった。
有楽町の交通会館、8階にこんな場所があった
ふるさと回帰支援センター・東京があるのは、
有楽町駅前の東京交通会館。
ここ自体は、
私にとって全然知らない場所ではなかった。
1階には有隣堂がある。
北海道どさんこプラザもある。
物産展のようなお店も多い。
なので、
交通会館には何度も行ったことがあった。
ところが。
8階にこんな巨大な移住相談施設があるなんて、まったく知らなかった。
エレベーターを降りて、
まず驚いた。
広い。
思っていたより、
ずっと広い。
私は、
自治体のパンフレットが並んでいて、
相談窓口がいくつかある程度の場所を想像していた。
全然違った。
各地域ごとに相談ブースが並び、
それぞれのブースには、
相談員さんが2〜3人くらいいる。
そして、
パンフレットの量。
これがすごい。
県ひとつでパンフレットが何十種類もある
たとえば、
ひとつの県だけでも、
パンフレットがずらっと並んでいる。
県全体の移住案内。
市町村ごとの紹介。
仕事。
住宅。
子育て。
観光。
地域によって内容も違う。
体感では、
ひとつの県だけで30種類くらいあるのでは?
というくらい。
ネットで検索していると、
どうしても、
自分が知っている市町村ばかり見てしまう。
でも、
紙のパンフレットがずらっと並んでいると、
「こんな町もあるんだ」
と、
知らなかった地域が目に入ってくる。
これは、
ネット検索とはかなり違った。
移住先が決まっていない人ほど、
一度来てみる価値がありそうだった。
栃木のパンフレットを見ていたら、なぜか静岡から声がかかった
私たちはそのころ、
那須をかなり見ていた。
なので、
まず栃木県のパンフレットを眺めていた。
すると、
相談員さんが声をかけてきた。
てっきり栃木の人かと思ったら、
静岡県の相談員さんだった。
どうやら、
私たちが見ていた場所が、
静岡県のパンフレット置き場にも近かったらしい。
静岡に興味がある人だと思われたようだった。
偶然である。
でも、
夫は静岡出身。
せっかくだから、
話を聞いてみることにした。
こういう偶然から、
知らなかった地域の話を聞けるのも、
リアルな相談窓口の面白いところかもしれない。
静岡県というより「静岡市」推しだった
対応してくれたのは、
相談員さんが2人。
話してみると、
静岡県全域を広く紹介するというより、
かなり、
静岡市推し。
という印象だった。
夫が静岡出身ということもあり、
話はしやすかった。
ただ、
私たちが当時気になっていたのは、
市街地というより、
広い土地。
山。
別荘地。
隣家の少ない場所。
そういうところ。
なので、
伊豆などの別荘地について聞いてみた。
すると、
そのあたりは、
あまり詳しくないとのことだった。
なるほど。
相談員さんにも、
当然、
得意な地域や分野がある。
「県の相談窓口に行けば、県内のことなら全部分かる」
というわけではなさそうだった。
これも行ってみて分かったことだった。
「ポツンと一軒家」に憧れると、買い物だけで往復2時間?
そして、
私たちが求めている暮らしを話した。
隣家が少ない。
できれば、
ちょっとポツンとしている。
山や自然が近い。
広い土地。
すると相談員さんから、
現実的な話が出てきた。
山のほうへ行けば、
確かに人家は少なくなる。
でも、
買い物に行くだけで片道1時間くらいかかる場所もある。
つまり、
往復2時間。
……。
これは、
かなり効いた。
「ポツンと一軒家」
という言葉だけ聞くと、
静か。
自然。
自由。
そんな魅力ばかり想像する。
でも、
冷蔵庫の牛乳がなくなったから、
スーパーへ。
それだけで、
往復2時間。
これは、
毎日の暮らしとなると、
話が違う。
私たちの場合、
私は運転もしない。
山奥の完全なポツン暮らしは、
やっぱり現実的ではない。
欲しいのは、
秘境ではない。
ちょっと人里から離れているくらい。
この違いが、
少しずつ見えてきた。
そして言われた「自治会は半強制と思ったほうがいい」
この日、
一番印象に残ったのが、
自治会の話だった。
田舎へ移住した場合、
自治会って、
どのくらい入らないといけないんだろう?
そんな話になった。
相談員さんから言われたのは、
「半強制だと思っていたほうがいい」
ということだった。
もちろん、
法律上必ず加入しなければならない、
という意味ではない。
でも、
地方では、
災害が起きたとき。
道路に何かあったとき。
雪。
台風。
停電。
困ったときに、
地域で助け合うことがある。
そういうとき、
普段まったく地域と関わっていない人が、
いざというときだけ、
「助けてください」
では困る。
だから、
日頃から地域との付き合いが必要になる。
そんな話だった。
なるほど。
理屈は、
よく分かる。
分かるのだけれど。
私の頭の中では、
別の言葉が浮かんでいた。
自治会、やっぱりあるのか。
私が欲しいのは「田舎」だけど「集落」ではないのかもしれない
田舎暮らしをしたい。
自然の中で暮らしたい。
隣家と少し距離が欲しい。
でも、
集落の一員として、
地域活動へ深く参加したいか。
と言われると、
それは少し違う。
このころ私は、
ようやく、
自分が求めているものが、
単なる「田舎暮らし」ではないことに気づき始めていた。
自然は欲しい。
広い土地も欲しい。
でも、
人間関係は、
できるだけ軽くしたい。
かなり都合がいい。
でも、
これが本音だった。
そして、
この自治会の話を聞いたことで、
それまで少し距離を置いていた、
別荘地
が、
急に気になり始めることになる。
管理費を払って、
道路やゴミなどを管理してもらう。
地域によっては、
一般の集落より、
自治会との距離も取りやすい。
もしかして、
私たちが求めているのは、
普通の田舎の集落ではなく、
「管理された田舎」なのでは?
そんなことを考え始めた。
次は栃木県のブースへ
静岡の話を聞いたあと、
本来の目的だった、
栃木県のブースへ行った。
今度は、
こちらから相談。
そのころ、
かなり気になっていたのは那須。
特に、
別荘地だった。
すると、
栃木の相談員さんは、
那須の別荘地について、
かなり詳しかった。
これはありがたかった。
ネットで調べていると、
どうしても、
販売中の物件情報ばかり出てくる。
でも、
実際に暮らすとなると、
知りたいのは、
それだけではない。
地域の雰囲気。
生活圏。
どこなら買い物しやすいか。
どんな地域が移住先として現実的なのか。
そんな話まで聞ける。
那須だけではなく、那須塩原周辺もおすすめされた
私たちは、
「那須」
という名前にかなり引っ張られていた。
高原。
別荘地。
観光地。
自然。
でも、
相談員さんからは、
那須だけではなく、
那須塩原市や、その周辺の市町村
も候補として勧められた。
なるほど。
移住先探しをしていると、
どうしても、
有名な地名に目が行く。
那須。
軽井沢。
蓼科。
でも、
実際に暮らすなら、
その周辺まで広げたほうが、
選択肢は増える。
土地の価格。
スーパー。
病院。
交通。
市街地までの距離。
「観光地として人気の場所」と、
「暮らしやすい場所」は、
同じとは限らない。
この視点も、
相談員さんと話したからこそ、
少し意識するようになった。
パンフレットだけもらうつもりだった
この日、
私は本当に、
資料だけもらって帰るつもりだった。
ところが、
静岡の相談員さんに声をかけられ、
ポツン暮らしの現実を聞き、
自治会の話を聞き、
栃木県では、
那須や那須塩原周辺の話を聞いた。
結果。
パンフレットより、
人から聞いた話のほうが残った。
ネットには、
きれいな情報が多い。
自然豊か。
移住支援。
のびのび子育て。
理想の田舎暮らし。
もちろん、
それも大事。
でも、
相談員さんと直接話すと、
「そこに実際に住むなら」
という話が出てくる。
スーパーまで何分。
自治会。
車。
雪。
地域との付き合い。
そういう、
物件サイトには載っていない話。
むしろ、
私たちが知りたかったのは、
そっちだったのかもしれない。
移住先が決まっていなくても行ってよかった
ふるさと回帰支援センターという名前だけ見ると、
移住先が決まっていて、
本格的に移住相談をする人が行く場所、
という印象があった。
でも、
実際に行ってみると、
そんなことはなかった。
パンフレットを見るだけでもいい。
気になった地域の人に話を聞いてみてもいい。
まだ、
県すら決まっていなくてもいい。
むしろ、
迷っている時期に行くほうが面白い場所
なのかもしれない。
ネットで一人で探していると、
どうしても、
自分の知っている範囲から、
候補地を探してしまう。
でも、
人と話すと、
突然、
静岡が出てきたり。
那須塩原が出てきたり。
思っていなかった方向へ、
選択肢が広がる。
この日、
私たちの移住先が決まったわけではない。
むしろ、
候補は増えた。
でも、
ひとつだけ、
はっきりした。
私たちが欲しいのは、
ただの「田舎」ではない。
自然があって。
生活にも困らず。
人との距離も、
ほどほどに保てる場所。
その条件を満たす場所を、
探さなければならない。
そして、
自治会の話を聞いた私は、
このあと、
それまで以上に、
別荘地
を見るようになっていく。
「別荘地って、
もしかして私たちに合ってる?」
パンフレットをもらいに行っただけのはずが、
土地探しの方向まで、
少し変わった一日だった。



