目次目次を閉じる
2026年8月初旬。
中古別荘を見たり。
土地を見たり。
原野の抜根や造成について調べたり。
私たちは少しずつ、
「完成した家を買う」以外の選択肢
も考えるようになっていた。
そんなころ、ひとつ妙に気になる物件を見つけた。
場所は那須町。
小さな家が一棟。
そして、その周りに広大な土地。
面積は、
約5000㎡。
坪にすると約1500坪。
……。
広い。
かなり広い。
というか、
何に使うんだ、1500坪。
でも、このころの私たちにとっては、
「広すぎるからナシ」
とはならなかった。
むしろ、
ちょっと想像してしまった。
ここ、“ぴちゅ森”にできるんじゃない?
大きな家ではなく「小さな家+広い土地」
この物件で面白かったのは、
建物そのものが巨大なわけではないことだった。
現在の掲載情報では、建物は約63㎡。
間取りは1LDK+ロフト。
そこに約4900㎡の土地が付いている。
つまり、
主役は家というより土地。
そんな物件だった。
これまで私は、
「どんな家?」
を先に見ていた。
広いリビング。
薪ストーブ。
ウッドデッキ。
間取り。
でも、この物件を見たときは少し違った。
家を見ながら、
その周りにある広大な土地へ目が行った。
ここなら、
犬を走らせられる。
畑もできる。
木も残せる。
果樹も植えられる。
薪棚も置ける。
小屋だって作れそう。
人間というものは、
1500坪を見せられると急に設備を増やし始める。
「森を買う」より、森と暮らしを作れそう
ちょうどこのころ、
私は「最初から完成した森を探さなくてもいい」と考え始めていた。
暮らしやすい場所を確保して、
必要なところだけ整えて、
木を残したり。
新しく植えたり。
少しずつ自分たちの森にしていけばいい。
そう考えると、
広い土地は魅力的だった。
全部を庭にする必要はない。
家の周りだけ整える。
犬が走るところを作る。
畑を作る。
残りは森。
それなら、
1500坪という数字も、
少しだけ現実味を帯びてくる。
いや。
少しだけである。
やっぱり広い。
公営水道がある。それだけで安心するようになっていた
そして、このころの私にはもうひとつ、
物件を見るときのチェック項目が増えていた。
水道。
この物件は現在の掲載でも公営水道。
排水は浄化槽となっている。
土地探しを始めたばかりなら、
たぶん私はそこをほとんど見ていなかった。
でも、
井戸。
水道引き込み。
本管までの距離。
そんな言葉を覚え始めたあとだったので、
「公営水道」
を見るだけで、
ちょっと安心するようになっていた。
人は変わる。
少し前まで薪ストーブしか見ていなかったのに。
別荘地の外、というのも気になった
この物件は別荘地の中ではなく、
現在の掲載では別荘地外のため管理費なしとなっている。
管理別荘地について散々調べ始めていたころなので、
これも気になった。
管理費がない。
自由度も高そう。
広い土地。
小さな家。
森。
なんとなく、
私たちが考え始めていた暮らしに近い。
「別荘を買う」
というより、
ここを拠点にして、自分たちで暮らしを作る。
そんな物件に見えた。
ただし、5000㎡は5000㎡である
もちろん、
広ければいいというものではない。
約5000㎡あれば、
草も生える。
木も伸びる。
落ち葉も出る。
土地には平坦な部分だけでなく勾配もある。
どこまで使えるのか。
どこを森として残すのか。
管理できるのか。
このころには、
「広い!最高!」
だけでは済まなくなっていた。
それでも、
この物件だけは妙に頭に残った。
「今すぐ買いたい」ではなかった
とはいえ、
2026年8月の時点で、
この物件に一直線だったわけではない。
ほかにも土地を見ていた。
小川付きも気になった。
安い原野も見ていた。
注文住宅も考え始めていた。
候補のひとつ。
面白い物件。
この時点では、
それくらいだったと思う。
ただ、
物件を閉じても、
なぜか少し気になる。
約5000㎡。
小さな家。
森。
犬を走らせる場所。
畑。
果樹。
薪。
少しずつ手を入れていく暮らし。
私たちがこの先、
「ぴちゅ森」と呼ぶようになるものに、
どこか近かったのかもしれない。
そして、この物件は一度では終わらなかった
このときは、
「こういう物件もあるんだな」
くらいだった。
そのまま別の土地も見た。
別の地域も調べた。
移住先も相変わらず迷走した。
でも。
この物件は、
それで終わらなかった。
約一か月後。
9月になって、
私はもう一度この物件をかなり真剣に見ることになる。
8月の私は、
まだそれを知らない。
このころはただ、
「5000㎡もあったら、ぴちゅ森みたいなことができるかも」
と思っただけだった。
土地探しでは、
一度見送ったはずの物件が、
あとになって急に意味を持ち始めることがある。
この家は、
そんな一軒になった。



