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Season 0|移住準備編

那須町高久乙・約121坪・480万円 夫が“小川付き土地”に食いついた。憧れるけど、湿気や家の傷みは大丈夫?

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2026年8月初旬。

いよいよ不動産会社への問い合わせも始めて、私たちの土地探しは少しずつ「物件サイトを眺めるだけ」ではなくなってきた。

そんなころ。

夫が妙に食いついた土地があった。

小川付き。

敷地のそば、あるいは敷地内を水が流れている土地だった。

夫はこういうものに弱い。

森。

沢。

小川。

井戸。

薪。

たぶん「自然界に最初から用意されている何か」が好きなのだと思う。

私は物件情報を見ながら、

「小川かあ……」

と思った。

夫は、

「小川いいじゃん!」

私は、

「湿気、大丈夫?」

同じ物件を見ているのに、視線がまるで違う。

小川のある土地、確かにものすごく魅力的

とはいえ、私だって小川そのものが嫌なわけではない。

むしろ、かなり好きだ。

庭から水の音が聞こえる。

鳥が水を飲みに来る。

夏は涼しそう。

木陰に椅子を置いて、小川を眺めながらお茶を飲む。

犬と歩く。

小さな橋なんかあったら最高だ。

さらに私はこのころ、

「小川ライブできるんじゃない?」

などと思い始めていた。

水の音と鳥の声だけを流す。

ぴちゅ森環境音チャンネル。

土地探しをしているだけなのに、また事業がひとつ生まれそうになる。

人間の欲望は本当に成長が早い。

でも私は「水が近い家」が気になった

夫が小川に夢を見ている一方で、私は別のことが気になっていた。

湿気。

水がずっと流れている場所なら、

周辺の湿度も高いんじゃない?

家がじめじめしない?

床下は大丈夫?

カビは?

木造住宅なら、家が傷みやすくなったりしない?

せっかく森の中に家を建てても、

数年後に、

「床下が大変なことになってます」

と言われたら嫌である。

私は小川を見ながら、

せせらぎより先に床下を想像していた。

だいぶ土地探しに汚染されてきた。

「小川がある=家が傷む」ではないらしい

調べてみると、当然ながら、

近くに小川があるだけで家が傷む

という単純な話ではなかった。

住宅、とくに木造住宅では、水分や湿気は木材の腐朽やシロアリ被害などに関係するため、湿気を適切に処理することは重要とされている。国土交通省も、地面からの湿気や結露などへの対策を住宅の耐久性に関わる要素として挙げている。

でも大事なのは、

小川までの距離。

土地の高低差。

水はけ。

地下水位。

日当たり。

風通し。

床下の防湿・換気。

家を建てる位置。

そういう条件の組み合わせらしい。

つまり、

「小川があるからダメ」ではなく、「水をどう逃がせる土地なのか」が大事。

これは少し安心した。

むしろ気になったのは「土地の水はけ」

小川そのものより、

私が見るべきなのは土地全体なのかもしれない。

雨が降ったあと、

水はどこへ流れるのか。

家を建てる予定地に水が集まらないか。

地面がいつまでもぬかるんでいないか。

小川より家の敷地のほうが低くなっていないか。

木が密集して、ほとんど日が差さない場所ではないか。

住宅の劣化を見る際にも、敷地の水はけや建物周囲の風通し、床下の換気状態などは確認項目になる。

つまり私は、

小川だけ見て「湿気が怖い」と判断するのではなく、家を建てる場所を見る必要がある

ということを知った。

また確認項目が増えた。

そして、もうひとつ怖いのが増水

湿気と同じくらい気になるのが、

大雨のとき、その小川はどうなるの?

という問題だった。

晴れた日の小川はかわいい。

水がさらさら流れて、

「自然っていいね」

となる。

でも台風や集中豪雨のときも、

同じ顔をしているとは限らない。

国土交通省も、中小・小規模河川を含めて洪水浸水想定区域を整備するための手引きを公表している。小さな水路だからといって、大雨時の水害リスクを考えなくていいわけではない。

ここで私の頭の中に、

「せせらぎ」

と

「増水」

という、まったく雰囲気の違う二文字が並んだ。

ハザードマップに色がなければ安心?

さらに気になったのは、

ハザードマップ。

洪水区域に入っていなければ大丈夫なのか。

これも単純ではなさそうだった。

洪水ハザードマップは公表されている浸水想定区域などをもとに作られているけれど、中小河川や小規模な流れについても別途リスク情報の整備が進められている。

だから小川付き物件なら、

地図に色がない=絶対に増水しない

と考えるのではなく、

不動産会社や管理会社に、

「過去に増水したことはありますか?」

「大雨のとき水位はどこまで上がりますか?」

「護岸は誰が管理していますか?」

くらいは聞いておいたほうがよさそう。

小川って、誰のもの?

そして土地探し初心者の私には、もうひとつ疑問が出てきた。

この小川、誰のもの?

自分の敷地なのか。

共有なのか。

水路なのか。

管理会社なのか。

行政なのか。

勝手に石を並べてもいいのか。

小さな橋を作ってもいいのか。

護岸が崩れたら誰が直すのか。

そう考えると、

「小川付き!」

の四文字だけでは全然足りない。

小川にも事情がある。

土地にも事情がある。

最近、事情のないものが何もない。

それでも、小川のある暮らしは魅力的

ここまで考えると、

小川付き物件なんて面倒そう。

となりそうだけれど、

不思議とそうでもなかった。

むしろ、

条件さえ問題なければ、

かなり魅力的だと思った。

人工的に作ろうとしても、

自然の小川は作れない。

水の音。

水辺の植物。

鳥や昆虫。

季節によって変わる風景。

それらが最初から土地にある。

これは普通の土地にはない価値だと思う。

夫が食いついた理由も、ちょっとわかる。

小川付き物件で確認したくなったこと

このころの私なら、小川のある土地を見るとき、

こんなことを確認したい。

雨のあとも土地はじめじめしていないか。

家を建てる場所と小川に十分な高低差があるか。

小川が増水した記録はないか。

土地の排水はどちらへ流れるのか。

小川や護岸を誰が管理しているのか。

家を小川からどの程度離して建てられるのか。

そして、

日当たりと風通しはどうか。

最初だったら、

「小川ある! 素敵!」

で終わっていた。

ちゃんと疑うようになった。

成長である。

夢がなくなったともいう。

夫は小川、私は床下

土地探しをしていると、

夫婦でも見るところが違って面白い。

夫は、

「ここ小川あるよ!」

と喜ぶ。

私は、

「床下湿気ない?」

と返す。

夫は土地にある可能性を見る。

私はそこで起こりそうなトラブルを見る。

たぶん両方いたほうがいい。

夫だけだったら、

沢と森だけを見て山奥へ行きそうだ。

私だけだったら、

安全確認ばかりして何も買わないかもしれない。

その中間くらいに、

私たちにちょうどいい土地があるのだと思う。

「便利な土地」だけがいい土地ではない

このころから、

土地を見る目も少し変わってきた。

平坦。

水道あり。

接道良好。

ハザード問題なし。

もちろん大切。

でも、それだけでは、

どの土地も同じになってしまう。

小川。

大きな木。

山の景色。

鳥。

そんな、

その土地にしかないもの

にも惹かれるようになった。

ただし、

ロマンの横には、

湿気。

増水。

管理。

という現実も置いておく。

どうやら私たちの土地探しは、

「問題のない土地」を探すだけではなく、「多少確認事項が増えても、ここで暮らしたいと思える土地」を探す段階

に入り始めていた。

そして夫は、

どうやら小川が好きらしい。

この先も土地に水が流れているたびに、

食いつく予感しかしない。