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移住先を探し始めたころ、私は管理別荘地にあまりいい印象を持っていなかった。
理由は簡単。
管理費がかかるから。
物件価格が安くても、
年間管理費○万円。
施設維持費○万円。
水道基本料。
名義変更料。
その他もろもろ。
……え。
土地を買ったあとも、毎年そんなに払うの?
せっかく田舎に移住するのに、固定費を増やしてどうする。
そう思っていた。
当時の私は、物件情報の「管理費」という文字を見るだけで、
「はい、マイナス一点」
くらいの勢いで判断していた。
しかしその後。
一般の土地や中古住宅を探し始めた私は、徐々に気づくことになる。
管理費を払わなければ、管理そのものが消えるわけではない。
管理費のない土地は、全部タダなのだと思っていた
これは完全に私の思い込みだった。
管理別荘地では年間数万円から十数万円の管理費がかかることがある。
一方、普通の土地には「年間管理費○万円」という表示はない。
だから一見すると、
普通の土地=無料
管理別荘地=有料
に見える。
ところが土地を探していくと、次々に別の問題が出てきた。
道路。
水道。
ごみ。
雪。
私道。
排水。
草刈り。
倒木。
そして、
それ、誰がやるの?
問題である。
管理会社がいない土地では、当然ながら誰かがやらなければならない。
多くの場合、それは自分だった。
「道路がある」だけでは終わらない
最初のころは、道路なんて家までつながっていればいいと思っていた。
でも調べると、
公道なのか。
私道なのか。
舗装されているのか。
冬に除雪されるのか。
傷んだら誰が直すのか。
倒木で通れなくなったら誰が対応するのか。
いろいろある。
特に山や森に近い土地では、道路は単なる「家までの線」ではない。
暮らしそのものだった。
車が入れなければ生活できない。
宅配も来られない。
工事車両も入れない。
雪が積もれば出られない。
つまり道路を維持することは、生活インフラを維持することだった。
ここで私は少しずつ思い始めた。
管理別荘地の管理費って、
もしかして道路を維持するお金でもあるのでは?
水道は「蛇口をひねれば出るもの」ではなかった
都会で暮らしていると、水道について考えることなんてほとんどない。
蛇口をひねる。
水が出る。
以上。
ところが土地探しをしていると、
「上水道なし」
「井戸」
「共同水道」
「引き込み工事必要」
「本管まで○メートル」
みたいな言葉が普通に出てくる。
そして私は知った。
水は、来ていなければ自分で連れてこなければならない。
これがなかなか大変。
水道本管が遠ければ、引き込み工事には当然お金がかかる。
井戸なら掘削費用も必要だし、水質や水量の問題もある。
浄化設備が必要になることもある。
それまで年間管理費を見て、
「高いなあ」
と思っていたのに、
水道工事の金額を見た瞬間、
「……管理費、そんなに悪いやつじゃないかもしれない」
と思い始めた。
人は現実を知ると急に優しくなる。
ごみ出しひとつにもルールがある
さらに意外だったのが、ごみ。
移住先を探し始めるまで、ごみ出しなんて全国どこでもだいたい同じだと思っていた。
そんなわけはなかった。
集積所はどこなのか。
誰が掃除するのか。
自治会に入らないと使えないことはあるのか。
別荘地なら管理会社が回収するのか。
そもそも家の近くまで収集車が来るのか。
地域によって事情が違う。
生活って、
家の中だけで完結しない。
道路、水道、ごみ、雪。
全部ひっくるめて暮らしなんだなと、このころようやく気づき始めた。
管理費は「何もしないのに取られるお金」ではなかった
もちろん管理別荘地なら何でも安心、というわけではない。
管理費が高いところもある。
何に使われているのかわかりにくいところもある。
管理会社の対応や、将来の運営状態も確認しなければならない。
でも少なくとも、
管理費=ただ取られるお金
という私の考え方は間違っていた。
道路を維持する。
除雪する。
共用部分を整備する。
ごみを管理する。
水道設備を維持する。
木が倒れたら対応する。
そういうことを誰かに任せるためのお金でもある。
つまり管理費とは、
「暮らしの面倒くさい部分をまとめて引き受けてもらう料金」
でもあるのだ。
これはかなり見方が変わった。
管理費ゼロでも、維持費ゼロとは限らない
普通の土地を買えば、年間管理費はない。
でも、
私道補修。
除雪。
草刈り。
井戸管理。
排水。
樹木の伐採。
そうした費用が突然発生する可能性はある。
しかも自分で業者を探さなければならない。
つまり、
管理費がない土地が安いのではなく、
費用の出方が違うだけ
なのかもしれない。
管理別荘地は毎年一定額を払う。
普通の土地は必要になったときに自分で払う。
そして自分で動く。
どちらがいいかは、その人の暮らし方次第だ。
自由と管理は、だいたいセットだった
一般の土地の魅力は自由度が高いこと。
庭を作る。
畑をする。
建物を増やす。
木を植える。
自分たちの好きなように暮らしを作りやすい。
一方で、
自由には管理がついてくる。
土地が広ければ草刈りも増える。
木が多ければ剪定や倒木リスクも増える。
道路が私道なら、その管理問題も出てくる。
何でも自由にできるということは、
何でも自分で考えなければならないということでもある。
私は家が欲しいだけなんだけど。
気づけば道路管理まで考えている。
「管理費が高い」ではなく「何を管理してくれるのか」
このころから私は、管理別荘地を見るとき、
「管理費はいくら?」
だけではなく、
「そのお金で何をしてくれるの?」
を見るようになった。
道路管理。
除雪。
水道。
ごみ。
共用施設。
防犯。
緊急時の対応。
森林管理。
内容が充実しているなら、年間管理費はむしろ保険のようなものかもしれない。
反対に、高いのに何もしてくれないなら困る。
金額だけでは判断できない。
ここでもまた、
土地選びは「価格表を見るゲーム」ではないことを知った。
管理別荘地は「高い土地」ではなく「サービス付きの土地」
最初の私は、
管理別荘地=毎年お金がかかる場所
だと思っていた。
今は少し違う。
管理別荘地とは、
道路や水道などの暮らしの基盤を、ある程度まとめて管理してくれる土地
でもある。
もちろん合う人、合わない人はいる。
全部自分でやりたい人には、一般の土地のほうがいい。
でも、
雪かきはしたくない。
道路補修の相談なんてしたくない。
水道トラブルも管理会社に聞きたい。
そんな人には、
管理費を払ってでも管理してもらう価値はある。
私はようやく、
年間管理費の数字だけを見て、
「高い!」
と叫ぶのをやめた。
というより。
水道工事や道路問題を知ったあとでは、
管理費を見る目が少し変わった。
管理費を払わない暮らしには、管理する暮らしが待っている。
どうやら田舎暮らしというのは、
安い土地を買えば完成、
というほど簡単ではないらしい。
またひとつ。
物件サイトの見方だけが、妙に詳しくなった。



