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田舎への移住を考え始めてから、
土地。
家。
道路。
水道。
ハザード。
ごみ。
いろいろなものを調べるようになった。
そして、
避けて通れない言葉が出てきた。
自治会。
もちろん、
自治会くらいは知っている。
回覧板が回ってきたり。
町内のお祭りをやったり。
ごみ置き場を管理したり。
そのくらいでしょう。
……。
と思っていた。
ところが、
田舎暮らしについて調べれば調べるほど、
自治会の仕事が増えていく。
草刈り。
側溝掃除。
水路清掃。
防災訓練。
ごみ当番。
役員。
祭り。
神社。
雪かき。
鹿柵。
サル。
葬式。
……。
待って。
自治会って、
そんなに守備範囲広かったの?
まず大前提。自治会ルールは地域ごとに全然違う
最初に大事なこと。
ここで紹介するものが、
全国すべての自治会にあるわけではない。
自治会・町内会は、
地域の住民が作っている団体なので、
活動内容も、
会費も、
当番も、
役員制度も、
地域によってかなり違う。
同じ市でも違う。
隣の集落でも違う。
つまり、
「○○市へ移住したら、このルールがあります」
とは限らない。
むしろ、
物件単位で
「この地区はどうですか?」
と確認したほうがよさそう。
という前提で。
まずは、
比較的分かりやすいところから見てみよう。
自治会あるある① 自治会費を払う
これは、
まあ分かる。
自治会に入れば、
自治会費や町内会費、
地域によっては区費などを払う。
それが、
防犯灯。
集会所。
ごみ置き場。
地域行事。
備品。
その他の地域活動に使われる。
金額も徴収方法も、
月払いだったり、
年払いだったり。
ここは、
あまり驚かない。
自治会にも運営費は必要である。
自治会あるある② 回覧板
自治会といえば、
やっぱりこれ。
回覧板。
行政のお知らせ。
防犯情報。
地域行事。
健康診断。
工事のお知らせ。
そして、
誰かの家からやってきて、
次の家へ旅立っていく。
令和になっても、
かなり現役らしい。
LINEではない。
メールでもない。
板である。
自治会あるある③ 班長・組長・役員が回ってくる
これも、
よく聞く。
自治会長。
副会長。
会計。
班長。
組長。
防災担当。
環境担当。
地域によって名称は違うけれど、
何年かに一度、
役割が回ってくる。
私はこれを見て、
最初に思った。
仕事がある人でも普通に回ってくるんだよね?
当然、
回ってくる。
在宅ワーカーだから免除。
作家だから締切中。
という制度は、
おそらくない。
自治会あるある④ ごみ置き場の掃除当番
これも、
かなり普通。
ごみステーションの掃除。
ネットを片付ける。
カラスに荒らされたものを片付ける。
分別されていないごみへの対応。
当番表を回す。
都会のマンションだと、
管理会社や清掃員さんがやってくれていた仕事が、
一戸建て地域では住民側へ来ることがある。
国立環境研究所も、ごみ集積所について、自治会が設置・修理、ごみ当番の調整、ルールの周知などを担うことが多いとしている。
ここまでは、
分かる。
自治会あるある⑤ 草刈り
そして、
田舎へ行くと急に存在感が増す。
草刈り。
道路脇。
公園。
河川。
集会所周辺。
農道。
空き地。
国交省が移住者向けに用意している自治会確認資料にも、共同作業として普通に、
草刈り。
溝掃除。
河川清掃。
生活道路・農道清掃。
などが並んでいる。
都会の町内会では、
「春の一斉清掃」
くらいだったものが、
田舎へ行くと、
草との戦争
になってくる。
自治会あるある⑥ 側溝掃除・水路の泥上げ
これも、
農村部ではかなり重要。
側溝にたまった泥。
落ち葉。
石。
草。
それを、
住民みんなで片付ける。
地域によっては、
農業用水路もある。
つまり、
家の前を掃く、
というレベルではない。
水の流れを守る。
急に社会インフラ感が強くなる。
自治会あるある⑦ 防災訓練・防犯活動
避難訓練。
防災備蓄。
防犯パトロール。
子どもの見守り。
これは、
自治会の役割としてかなり納得できる。
特に田舎は、
災害時、
行政がすぐ来られない場所もある。
近所の人が、
誰が住んでいるか分かっている。
それ自体が、
防災になることもある。
ここまで、
私は、
「まあ分かる」
である。
自治会あるある⑧ 祭り・盆踊り・運動会
これも、
イメージ通り。
夏祭り。
盆踊り。
餅つき。
運動会。
文化祭。
見る側なら、
楽しそう。
しかし、
自治会役員側に回った瞬間、
話が変わる。
テント。
机。
椅子。
飲み物。
抽選会。
交通整理。
撤収。
祭りは、自然発生しない。
誰かが、
めちゃくちゃ働いている。
ここまでは分かる。
回覧板。
ごみ。
草刈り。
防災。
祭り。
役員。
うん。
自治会なら、
まあありそう。
問題は、
ここからである。
びっくりルール① 共同作業を休んだら「出不足金」
草刈りがあります。
参加してください。
仕事で無理です。
はい、
分かりました。
……。
では○千円お願いします。
え?
となる制度。
名前は、
出不足金。
地域によっては、
共同作業へ出られなかった場合に、
参加者との負担の公平を図るため、
一定額を支払う仕組みがある。
国交省の移住関連資料でも、共同作業の確認項目として扱われるほど、地域生活では実際に存在する制度。
考え方としては、
分からなくもない。
出た人は、
休日を使って働いている。
出なかった人が、
完全無料というのも不公平。
理屈は分かる。
でも、
東京から移住して初めて、
日曜日の草刈りです。
欠席ですか?
では出不足金です。
と言われたら、
「出不足金という日本語を今日初めて知りました」
から始まると思う。
びっくりルール② 草刈りの日、朝5時30分にサイレン
そして、
私が聞いた地域ルール。
草刈りの日。
集合時刻が早い。
暑くなる前にやるためだろう。
それは分かる。
そして、
作業開始を知らせるため、
朝5時30分にサイレン。
……。
5時30分。
私はたぶん、
まだ夢の中である。
そこへ、
ウーーーーーーー。
村、起床。
目覚まし時計ではない。
スマホでもない。
集落全体が起こしてくる。
合理的といえば、
ものすごく合理的。
寝坊する人が、
ほぼいない。
ただし、
都会から来た初日の人は、
確実に
「何事!?」
となる。
なお、
こうした時間やサイレンの有無は完全に地域ごとの話。
全国共通ではない。
だからこそ面白い。
びっくりルール③ 鹿柵の維持管理まで自治会
草刈り。
分かる。
側溝。
分かる。
ごみ。
分かる。
そして国交省の自治会確認資料を読んでいたら、
共同作業の例に、
さらっと書いてあった。
鹿柵フェンスの維持管理作業。
鹿柵。
なるほど。
田舎である。
畑を守るため、
集落の周囲へ獣害防止フェンスを設置する地域がある。
当然、
草が絡む。
壊れる。
穴が空く。
そして、
直す。
つまり、
移住後、
自治会から、
今度の日曜日、フェンスお願いします。
と言われ、
鹿との国境警備隊に配属される可能性がある。
東京では、
まずなかった仕事。
びっくりルール④ ごみ置き場が自治会問題になる
これは、
笑い話だけでは済まない。
自治会へ入らなくても、
ごみは出る。
当然である。
ところが、
ごみステーションそのものを、
自治会が設置・維持している地域では、
未加入者がそのごみ置き場を使えるのか
という問題が起きる。
国立環境研究所が2019年につくば市の自治会長を対象に行った調査では、自治会管理の集積所について、およそ3分の2が「自治会員のみ利用可能」と回答している。未加入者にも認める自治会では、利用料金を徴収するケースもあった。
これ、
移住前にかなり重要だと思う。
物件を買いました。
引っ越しました。
自治会には入りません。
翌朝。
「ところでゴミ、どこへ出すの?」
となったら困る。
だから、
「自治会に入るかどうか」
だけではなく、
ごみステーションの利用条件
まで聞いたほうがいい。
これは、
移住物件チェックリスト入り。
びっくりルール⑤ 自治会役員一覧に「宮総代」
さらに、
国交省の自治会確認資料。
自治会長。
副自治会長。
会計。
隣保長。
ここまでは分かる。
その途中に、
普通の顔をして、
宮総代
がいる。
……。
宮総代?
神社関係の役割である。
つまり地域によっては、
自治会と、
地域の神社や祭礼が、
かなり近い。
長く住んでいる人には、
当たり前なのだろう。
でも、
移住者からすると、
自治会へ入ったら、
急に神社関係の役職まで出てきた
となる可能性がある。
これは、
宗教や信条に関わる人もいるので、
「昔からこうだから」で済ませず、
事前に確認したいところ。
実際、自治会費と氏子費や祭礼関連の支出が問題になり、裁判に発展した事例も存在する。
謎ルール① 正月、一升瓶を持って近所へ挨拶
そして、
私が聞いた中で、
かなり衝撃だったもの。
正月は、一升瓶を持って近所へ挨拶へ行く。
……。
一升瓶。
タオルでもない。
菓子折りでもない。
酒。
しかも一升。
これ、
初めて聞いたとき、
昭和の映画かと思った。
新年。
雪。
玄関。
「今年もよろしくお願いします」
そして、
ドン。
一升瓶。
ただし、
これはあくまで特定地域で聞いた慣習。
全国の自治会で行われているわけではない。
でも、
ここから分かるのは、
地域によっては自治会規約に書かれていない、
「みんな昔からやってるよ」系ルール
もあるということ。
これが、
一番分かりにくい。
「規約には書いてないけど、みんなやってます」が一番怖い
自治会費、
年12,000円。
草刈り、
年2回。
班長、
10年に一回。
これは、
数字が分かる。
判断できる。
でも、
厄介なのが、
慣習。
正月はこれ。
祭りの前日はこれ。
新しく入った家はこれ。
○○家に不幸があったらこれ。
「ルールなんですか?」
と聞くと、
ルールってほどじゃないよ。
みんなやってるだけ。
この、
「みんなやってるだけ」
が、
場合によっては一番強い。
びっくりルール⑥ 地域の葬式を手伝う
昔ながらの地域では、
誰かが亡くなると、
近所や班が、
葬儀を手伝う慣習もある。
受付。
案内。
食事。
その他の準備。
現代では葬儀会館へ任せる地域も多いけれど、厚労省資料にも、町内や班の人が受付や賄いを手伝った地域事例が登場する。
都会暮らしだと、
近所の人が亡くなっても、
そもそも知らないことがある。
田舎だと、
地域全体の出来事
になる場合がある。
これは、
良い悪いではなく、
文化が全然違う。
そして極めつけ。「自治会って何屋なんだ?」
ここまで並べる。
ごみ。
道路。
草。
水路。
防災。
祭り。
神社。
鹿。
葬式。
雪。
防犯。
……。
自治会、何屋なんだ。
行政?
管理会社?
イベント会社?
造園会社?
害獣対策班?
冠婚葬祭業?
全部、
少しずつ違う。
たぶん答えは、
「地域で必要だけれど、誰かがやらないと回らないものを、昔から住民でやってきた組織」
なんだと思う。
そう考えると、
守備範囲が広い理由も、
少し分かる。
田舎ほど自治会の仕事が増えやすい理由も分かってきた
都会では、
管理会社。
清掃業者。
行政。
警備会社。
公共交通。
いろいろなサービスが、
細かく分かれている。
でも、
人口が少ない地域では、
全部を専門業者へ頼めるとは限らない。
だから、
住民同士でやる。
水路。
草。
雪。
獣害。
防災。
そこには、
ちゃんと理由がある。
だから私は、
自治会活動そのものを、
「面倒くさいから全部嫌」
とは思わない。
問題は、
自分たちがどこまでなら参加できるか。
そこだと思う。
「自治会ありますか?」だけでは全然足りない
ここまで調べて、
ひとつ分かった。
移住相談で、
自治会ってありますか?
と聞く。
これは、
質問として弱い。
だいたい、
「あります」
で終わる。
必要なのは、
もっと具体的な質問。
自治会費はいくら?
共同作業は年間何回?
何時集合?
草刈り・水路掃除はある?
欠席した場合はどうなる?
出不足金はある?
役員は何年に一度?
ごみ当番は?
自治会未加入でもごみステーションを使える?
祭礼や神社関係の負担は?
雪かきは?
暗黙の慣習はある?
最後の質問、
かなり重要だと思う。
できれば「移住者」に聞きたい
そして、
役所や不動産屋だけではなく、
できれば、
その地域へ最近移住した人にも聞きたい。
昔から住んでいる人にとっては、
当たり前すぎて、
説明するほどでもないルールがあるから。
例えば、
正月?
ああ、一升瓶持って挨拶するよ。
くらいの感覚だったら、
移住相談の説明項目には、
たぶん入らない。
こっちは、
そこを聞きたいのである。
「自治会が大変な地域」ではなく「自分に合う地域」を探す
結局、
自治会活動が多いから、
悪い地域。
少ないから、
良い地域。
ではないと思う。
地域活動が好きな人なら、
祭りや共同作業が多い場所のほうが、
早く地域に馴染めるかもしれない。
災害や大雪のとき、
近所同士の関係が強いことが、
大きな安心になることもある。
逆に私は、
人付き合いゼロにしたいわけではないけれど、
仕事や生活まで、
地域行事中心になるのは困る。
欲しいのは、
適度な距離。
だから、
家や土地と同じ。
自治会にも、
相性がある。
移住先では「家」だけでなく「集落の取扱説明書」も欲しい
物件情報には、
土地面積。
建物面積。
築年数。
水道。
下水道。
接道。
いろいろ書いてある。
でも、
本当に欲しいのは、
もう一枚。
集落の取扱説明書。
自治会費 ○円。
草刈り 年2回。
集合 朝6時。
出不足金 ○円。
ごみ当番 年○回。
役員 ○年に一度。
神社行事 あり・なし。
雪かき 住民対応あり。
謎の一升瓶 あり・なし。
これ。
不動産サイトに載せてほしい。
むしろ、
間取り図の次に見たい。
家を買うということは、地域の暮らし方も一緒に選ぶことだった
私は最初、
田舎暮らしを、
かなり物理的に考えていた。
家。
庭。
森。
犬。
薪ストーブ。
でも、
そこには当然、
人が住んでいる。
長い時間をかけてできた、
その土地の暮らし方もある。
中には、
合理的なものもある。
必要なものもある。
面白いものもある。
そして、
「なんでそうなった?」
と言いたくなるものもある。
だから、
移住前には、
物件だけではなく、
地域のルールも見ておきたい。
特に、
朝5時30分に何か鳴る地域なのかどうかは、先に教えてほしい。
私は、
かなり重要だと思っている。
🌲🏠🔔🍶
※自治会・町内会の活動や慣習は地域によって大きく異なります。本文で紹介したものは各地で確認されている事例や、私が実際に聞いた地域の例で、すべての自治会に当てはまるものではありません。ごみ集積所の利用条件や共同作業、会費、祭礼等については、移住を検討する地区ごとに自治体・自治会・不動産会社などへ確認するのがおすすめです。


