目次目次を閉じる
土地探しを始めたころ、
私は、
欲しいものを全部、自分の土地に入れようとしていた。
家。
ドッグラン。
家庭菜園。
果樹。
森。
薪棚。
小屋。
駐車場。
そして、
できれば少し広めの畑。
そうして考えていくと、
当然、
土地はどんどん広くなる。
500㎡では足りない。
1000㎡。
2000㎡。
3000㎡。
気づけば、
ちょっとした農場みたいな土地を探し始めていた。
でも、
ふるさと回帰支援センターへ行った日。
別荘地を見直し、
土地の広さも考え直しているうちに、
ふと思った。
畑まで、自分の土地に入れなくてもよくない?
私たちは農家になりたいわけではない
そもそも、
私たちがやりたいのは、
農業を仕事にすることではない。
自分たちで食べる野菜を、
少し作りたい。
トマト。
ナス。
きゅうり。
ハーブ。
じゃがいも。
ブルーベリー。
できれば、
季節ごとに何か収穫できたら楽しい。
そのくらい。
なのに、
土地を探しているうちに、
いつの間にか、
「畑として使える場所も広く欲しい」
と思い始めていた。
夢が、
勝手に農地を拡張している。
家庭菜園なら、家の近くがいい
よく考えると、
日常的に使う畑は、
広さより、
家から近いこと
のほうが大事かもしれない。
夕方、
料理をしていて、
「ネギ欲しい」
と思ったら、
庭へ出る。
トマトをひとつ取る。
バジルを少し摘む。
そのくらいなら、
家の横に、
小さな菜園があればいい。
わざわざ、
敷地の一番奥まで歩いて、
巨大な畑へ行く必要はない。
むしろ、
毎日使うなら、
水道にも近い。
道具も運びやすい。
収穫も楽。
小さくて近い畑のほうが、使いやすい。
当たり前なのだけれど、
広い土地ばかり見ていると、
こういうことを忘れる。
本格的にやりたくなったら、そのとき考えればいい
そして、
もし将来、
夫が、
「もっと畑やりたい」
となったら。
そのとき、
近くで農地を借りる方法を考えればいい。
自宅とは別に、
畑があってもいい。
徒歩で行ける。
自転車で行ける。
車で少し行く。
そのくらいでもいい。
私はそれまで、
暮らしに必要なものは、
全部、
敷地境界線の中にないといけないような気がしていた。
でも、
別にそんなことはない。
スーパーだって、
病院だって、
自分の土地にはない。
畑だって、
必要なら、
外にあっていい。
「所有しない」という選択肢
これ、
土地探しをしていると、
意外と忘れやすい。
欲しいものがある。
↓
じゃあ、
そのための土地を買う。
と、
すぐ考えてしまう。
でも、
何でも所有する必要はない。
畑。
作業場。
駐車場。
山。
森。
使いたいなら、
借りる。
共有する。
近所の施設を使う。
そういう方法もある。
特に畑は、
始めてみないと、
自分たちがどのくらいやるのか分からない。
最初は、
家庭菜園で十分かもしれない。
逆に、
ものすごくハマるかもしれない。
だったら、
最初から、
その未来のために、
3000㎡の土地を買っておく必要はない。
畑は、意外と体力仕事である
しかも、
畑。
楽しそう。
収穫。
新鮮な野菜。
採れたてトマト。
そういうところばかり想像するけれど、
当然ながら、
そこまでには、
いろいろある。
耕す。
植える。
水をやる。
草を取る。
支柱を立てる。
虫。
病気。
収穫。
片付け。
しかも、
夏。
暑い。
私は、
土地だけ見ながら、
「畑もやりたい!」
と言っていたけれど、
よく考えれば、
畑は、
置いておけば勝手に野菜が出てくる装置ではない。
仕事である。
趣味だけど、
仕事である。
広い畑を持つと、草もセットでついてくる
そして、
何度も出てくる。
草。
土地が広くなると、
ほぼ必ず、
草の話へ戻ってくる。
畑として使っている部分だけでなく、
畝と畝の間。
周囲。
境界。
使っていない部分。
そこにも、
草は生える。
もし、
「将来畑やるかもしれないから」
という理由で、
広い土地を持っても、
数年間何もしなければ、
そこは、
立派な草原になる。
その草原を、
未来の自分が管理する。
なんだか、
未来の自分に仕事を押しつけているような気がしてきた。
だったら、自宅は「暮らす土地」にすればいい
ここで、
かなり考え方が整理された。
自宅の土地は、
暮らすための土地。
家。
庭。
犬。
家庭菜園。
果樹。
木。
外でお茶を飲む場所。
それが入ればいい。
農業をする土地まで、
同じ場所にまとめなくていい。
そう考えると、
1000㎡前後でも、
十分に見えてくる。
むしろ、
家の周りを、
きちんと手入れできる広さにして、
気持ちよく暮らす。
そのほうが、
私には合っているかもしれない。
「全部入りの土地」を探さなくてよくなった
これは、
土地探しにとって、
かなり大きかった。
それまでは、
一つの物件に、
全部を求めていた。
広い。
平ら。
畑ができる。
森がある。
眺望がいい。
道路がいい。
水道がある。
隣家が遠い。
買い物も便利。
安い。
そんな土地。
あるわけがない。
全部盛りである。
でも、
畑を外へ出しただけで、
条件が一つ減る。
「農地として広く使える」
を、
自宅用地へ求めなくていい。
すると、
別荘地。
住宅地の外れ。
1000㎡くらいの土地。
そういう場所も、
候補に戻ってくる。
別荘地との相性もよかった
この発想は、
別荘地を見直したタイミングとも、
すごく相性がよかった。
別荘地は、
場所によって、
本格的な農業に向かないことがある。
管理規約。
土地の地目。
日当たり。
木。
傾斜。
いろいろある。
でも、
自宅では、
家庭菜園程度。
本格的な畑は、
別の場所。
と考えれば、
別荘地でも、
十分候補になる。
私が欲しいのは、
農地そのものではなく、
田舎で気持ちよく暮らす家。
そのことが、
少しずつ分かってきた。
「やりたいこと」と「所有するもの」は別だった
移住を考え始めると、
夢が増える。
畑をやりたい。
じゃあ畑付きの土地。
森が欲しい。
じゃあ森付きの土地。
犬を走らせたい。
じゃあ巨大な庭。
でも、
やりたいこと全部を、自分で所有しなくてもいい。
必要なときに、
必要な場所を使えばいい。
これは、
東京では、
当たり前の感覚だった。
公園へ行く。
貸し農園を使う。
施設を借りる。
でも、
田舎へ移住するとなった途端、
私は、
全部、
自分の土地へ詰め込もうとしていた。
なぜ。
土地が安く見えたからだろうか。
危険である。
余白は欲しい。でも、余りすぎなくていい
もちろん、
土地には余裕が欲しい。
隣家との距離。
犬が走る場所。
木を植える場所。
何もしない場所。
そういう余白は、
これからも欲しい。
でも、
余白と、
持て余す土地は違う。
2000㎡。
3000㎡。
という数字を見ると、
夢は広がる。
でも、
1000㎡を、
ちゃんと好きな場所にする。
庭。
木。
犬。
果樹。
小さな畑。
そのほうが、
ずっと豊かな暮らしになるかもしれない。
土地を買う目的が、少しずつ明確になった
最初は、
広い土地が欲しい。
だった。
それが、
少しずつ、
変わってきた。
犬が走れる場所が欲しい。
木が欲しい。
小さな畑が欲しい。
静かに暮らしたい。
そして、
暮らしやすい場所が欲しい。
土地そのものが欲しいわけではない。
そこでやりたい暮らしがある。
そのために必要な分だけ、
土地があればいい。
畑がもっと必要になったら、
そのとき借りればいい。
未来の可能性のために、
今、
巨大な土地を抱えなくてもいい。
この考え方ができるようになって、
土地探しは、
ずいぶん楽になった。
そして、
自宅に必要なものを整理していくうちに、
また、
別の方法を思いついた。
**古い家がついた土地を買って、
そこに先に住みながら、
敷地内に新しい家を建てるのはどうだろう?**
土地探し、
条件を減らすと、
なぜかまた、
新しい案が増えていく。



