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2026年8月。
土地を買って、
注文住宅を建てる。
その場合、
土地代。
着工金。
中間金。
完成時の支払い。
住宅ローンには、
つなぎ融資や分割融資という方法もある。
そんなことを調べて、
「なるほど。方法はいろいろあるんだな」
と少し安心した私。
そして次に思った。
ところで、私、住宅ローン借りられるの?
そう。
ここまでずっと、
土地のことばかり見ていた。
広さ。
眺望。
平坦地。
接道。
水道。
家の間取り。
でも住宅ローンを借りるとき、
銀行が見るのは山ではない。
私である。
とうとう、
土地ではなく、
自分自身が審査される番が来た。
私は会社員ではない
私はフリーランスで仕事をしている。
毎月、
会社から決まった給料が振り込まれるわけではない。
月によって、
売上は変わる。
多い月もあれば、
少ない月もある。
経費もある。
確定申告もする。
もちろん、
フリーランスだから住宅ローンが組めない、
というわけではない。
でも調べてみると、
会社員とは、
銀行の見る場所が少し違うらしい。
会社員なら、
「年収」
を見ることが多い。
一方、
個人事業主の場合。
重要になってくるのが、
所得。
ここで私は、
嫌な予感がした。
売上じゃないの?
たとえば、
年間売上が500万円。
でも、
経費が200万円かかっている。
すると、
単純化すれば所得は300万円。
住宅ローンの審査で、
個人事業主について重視されるのは、
この経費を引いたあとの所得であることが多い。
SBI新生銀行も、
個人事業主について、
売上ではなく「経費控除後の所得」を申込条件に使っている。
……。
ここで私は、
自分の確定申告書を思い出した。
前年。
けっこう、
経費を入れた。
仕事に必要なものを買って、
必要経費として、
きっちり申告した。
節税という意味では、
所得が必要以上に大きくならない。
よし。
ちゃんと申告できた。
と思っていた。
ところが。
住宅ローンの世界では、
その確定申告書を銀行が見る。
あっ。
節税では、
所得は抑えたい。
住宅ローンでは、
所得は高いほうがいい。
なんということでしょう。
同じ数字なのに、
立場が変わると、
急に意味が変わった。
確定申告書を3年分見る銀行も多い
さらに調べると、
前年だけを見るとは限らなかった。
三菱UFJ銀行では、
確定申告をしている人について、
確定申告書一式と納税証明書を、
直近3年分
用意するよう案内している。
みずほ銀行も、
自営業者・個人事業主について、
過去3年分の確定申告書と付表の写しを、
収入証明資料として案内している。
三井住友銀行も、
個人事業主について、
原則として確定申告書3年分を用意するという説明がある。
つまり、
今年めちゃくちゃ稼いだ!
だけでは、
必ずしも強くない。
前年。
その前年。
さらにその前年。
銀行からすると、
「それ、続いてます?」
を見るわけである。
そりゃそうだ。
住宅ローンは、
数十年かけて返す。
1年間だけ売上がドーンと増えた人より、
何年も安定して所得がある人のほうが、
銀行としては安心だろう。
分かる。
非常によく分かる。
でも、
フリーランス側としては、
ちょっと待ってほしい。
過去の私、
未来の住宅ローンのことなんて考えずに、
普通に確定申告している。
銀行によって、かなり違った
そこで、
個人事業主の場合、
各銀行がどんな書類や条件を出しているのか、
2026年9月時点の公開情報をざっくり調べてみた。
| 金融機関 | 個人事業主について公開されている主な内容 |
|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 確定申告書一式・納税証明書を直近3年分。 |
| みずほ銀行 | 自営業者・個人事業主は過去3年分の確定申告書・付表などを案内。 |
| 三井住友銀行 | 個人事業主は原則として確定申告書3年分を準備するとの案内。納税証明書も複数期分が必要になる。 |
| ドコモSMTBネット銀行 | 確定申告書一式と納税証明書を、それぞれ直近3年分。 |
| auじぶん銀行 | 個人事業主について確定申告書・納税証明書などを確認。公式コラムでは直近3年分を一般的な必要書類として案内している。 |
| SBI新生銀行 | 業歴2年以上+2年間の平均所得300万円以上が申込条件。確定申告書・納税証明書は直近2年分。 |
| 楽天銀行 | 金利選択型では、自営業者は前年の申告所得400万円以上が申込条件。確定申告書・納税証明書は直近2年分。 |
| フラット35 | 前年の公的証明上の所得などを年収として扱い、すべての借入れを含めた総返済負担率を審査基準にする。年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下。 |
こうして並べてみると、
けっこう違う。
3年間を見るところ。
2年間を見るところ。
前年所得に明確な申込基準があるところ。
同じ「住宅ローン」でも、
入口から違う。
だから、
フリーランスの場合、
一つの銀行だけ見て「私は無理」と判断する必要はなさそう
と思った。
※もちろん、これは「この条件なら融資される」という意味ではない。住宅ローンの審査基準や審査通過率は各行ともすべて公開しているわけではなく、実際には年齢、借入額、物件、他の借入、信用情報なども含めて総合的に判断される。
SBI新生銀行は「2年平均」という考え方
個人的に面白いと思ったのが、
SBI新生銀行だった。
個人事業主の申込条件は、
業歴2年以上。
そして、
2年間の平均所得が300万円以上。
つまり、
必ずしも3年待たなくても、
条件上は申し込める。
ただし、
ここでもやっぱり、
売上ではない。
所得。
500万円売っていても、
経費が250万円なら、
所得は250万円。
この違いは大きい。
フリーランスになってから、
「今年いくら売れた?」
ばかり気にしていたけれど、
住宅ローンを考えるなら、
もうひとつ、
「今年いくら所得を残した?」
も重要になってくる。
楽天銀行は前年の申告所得400万円以上
楽天銀行の金利選択型住宅ローンは、
2026年9月時点で、
単独で借りる場合、
前年の年収、
自営業者なら申告所得400万円以上
という申込条件を出している。
そして、
確定申告書と納税証明書については、
直近2年分を求めている。
ここは条件がかなり分かりやすい。
逆に言えば、
申告所得が条件に届いていなければ、
売上がいくら多くても、
まず入口で条件を満たさない。
フリーランス、
売上だけ自慢している場合ではなかった。
フラット35という選択肢もある
そして、
フリーランスの住宅ローンを調べると、
よく出てくるのが、
フラット35。
フラット35の場合、
年収として扱われるのは、
自営業者なら原則として、
前年の公的証明書に記載された所得金額など。
そして、
年収に対して、
住宅ローンだけでなく、
車のローン。
教育ローン。
カードローン。
分割払い。
リボ払いなども含めた、
年間の返済総額を見る。
2026年4月時点では、
年収400万円未満なら、
年間返済額が年収の30%以下。
400万円以上なら、
35%以下。
という総返済負担率の基準が公開されている。
民間銀行のように、
「3年間の所得を見る」という形とは、
少し考え方が違う。
だから、
前年から所得が大きく伸びた人などの場合、
比較対象にはなりそうだった。
もちろん、
フラット35には、
住宅そのものにも技術基準がある。
どんな物件でも使えるわけではない。
でも、
会社員じゃないから住宅ローンは無理
という話では、
全然なかった。
フリーランスは「節税しすぎ」に注意?
ここで、
個人事業主特有の悩みが出てくる。
経費を正しく計上する。
これは当然。
でも、
住宅購入を考えている数年間に、
とにかく所得を小さくしようとして、
必要以上に利益を圧縮すると、
住宅ローンでは不利になる可能性がある。
SBI新生銀行も、
個人事業主の場合、
収入ではなく所得が重視されるのが一般的で、
費用計上によって所得が小さくなると、
住宅ローン審査では影響する可能性があると説明している。
節税したい私。
住宅ローンを借りたい私。
二人の私が、
確定申告書の上で戦い始める。
どっちやねん。
ただ、
これは架空の所得を作れ、
という話ではもちろんない。
必要な経費は、
当然経費。
大事なのは、
家を買いたい時期が決まっているなら、
数年前から、
住宅ローン審査で何を見られるかも意識しておくことだと思った。
「今年から頑張る」では遅いこともある
たとえば、
3年分を見る銀行へ申し込むなら、
2028年に家を買いたい、
と思ったところで、
2027年だけ所得を増やしても、
それ以前の数字も見られる可能性がある。
そう考えると、
住宅購入って、
家を買う年から始まるわけではない。
数年前の確定申告から始まっている。
これは、
フリーランスの私には、
かなり衝撃だった。
昔の自分に、
言ってやりたい。
「その経費、
住宅ローン審査でも見られるぞ」
と。
まあ、
当時の私は、
まさか数年後に、
山の近くで平屋を建てようとしているとは、
思っていない。
人生、
急に家を建て始める。
右肩上がりならどう見られる?
もうひとつ、
気になった。
仮に、
3年前。
2年前。
去年。
と、
所得が上がっていたらどうなんだろう。
これは、
各銀行が詳しい審査ロジックを公開しているわけではないので、
「右肩上がりなら必ず有利」
とは言えない。
ただ、
銀行が複数年の確定申告書を求めている以上、
単年度の所得だけではなく、
事業が継続しているか、
収入に大きな変動がないかなどを確認する材料になることは想像できる。
少なくとも、
一発だけ大きく売れた年があるより、
何年も事業を続けていることを示せるほうが、
私としても説明しやすい。
つまり、
目標は、
「来年だけ稼ぐ」
ではない。
ちゃんと事業を育てる。
結局そこへ戻ってきた。
住宅ローンのためだけに仕事をするわけではないけれど
もちろん、
住宅ローンの審査を通すためだけに、
仕事をしているわけではない。
経費を減らして、
税金をたくさん払えばいい、
という単純な話でもない。
でも、
将来、
住宅ローンを使って家を建てたいなら、
確定申告書は、
ただ税務署へ出す書類ではない。
銀行に、
「私はこういう仕事をして、これくらい利益を出しています」
と説明する資料にもなる。
そう考えると、
急に重みが変わった。
今まで、
確定申告が終わったら、
「あー終わった!」
くらいだった。
これからは、
たぶん違う。
提出したあと、
一度くらい、
住宅ローン目線でも見ておこうと思う。
フリーランスでも住宅ローンは組める
調べる前は、
フリーランスって、
住宅ローンかなり厳しいのかな、
と思っていた。
でも、
実際には、
個人事業主向けの条件を、
きちんと公開している銀行は複数ある。
3年分を見る銀行。
2年平均を見る銀行。
前年所得を基準にする銀行。
フラット35。
選択肢は、
思っていたより多かった。
ただし、
会社員と比べて、
確定申告書の数字がものすごく大事。
これは間違いなさそうだった。
山を見る。
土地を見る。
道路を見る。
水道を見る。
そして、
確定申告書を見る。
移住先探しを始めたころ、
まさか最後に、
自分の所得欄を眺めることになるとは思わなかった。
でも、
これも家づくり。
夢の平屋へ続く道は、
山道ではなく、
数字の中にもある。
そして次に気になったのは、
当然、
これだった。
で、結局いくら借りられるの?
年収。
所得。
年齢。
返済期間。
頭金。
夫婦で借りる?
一人で借りる?
私はとうとう、
住宅ローンのシミュレーターに、
数字を入れ始めることになる。
山の眺望より、
確定申告書。
そして今度は、
夢の広さより、借入可能額である。
家づくり、
どんどん現実になってきた。



