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2026年8月初旬。
土地の広さについて考え始めた私は、
500㎡では足りない。
1000㎡ならどうだ。
いや、2000㎡くらいあったら、
家もドッグランも畑も果樹も森も入るのでは。
などと、
土地の面積をどんどん増やしていた。
そして物件サイトでも、
1000㎡。
1500㎡。
2000㎡。
3000㎡。
と、
かなり広い土地を見るようになった。
そんなある日、
広くて安い土地を見つけた。
「え、こんなに広いのにこの値段?」
と思って詳細を見る。
そして写真を見る。
……。
斜めである。
かなり斜めである。
ここで私はようやく、
土地には、
面積とは別に“使えるかどうか”という問題がある
ことに気づき始めた。
2000㎡あっても、2000㎡使えるとは限らない
土地探しを始めたばかりのころ、
私は土地の広さを、
ほぼ数字だけで見ていた。
500㎡。
1000㎡。
2000㎡。
数字が大きければ、
そのぶんいろいろできる。
単純にそう思っていた。
ところが、
実際の土地は四角い紙ではない。
斜面。
段差。
崖。
法面。
雑木林。
沢。
道路より高い。
道路より低い。
いろいろある。
2000㎡と書いてあっても、
その2000㎡全部に、
家を建てたり、
犬を走らせたり、
畑を作ったりできるわけではない。
極端な話、
2000㎡のうち、
平らなのは500㎡。
残り1500㎡は斜面。
という土地だってある。
数字だけなら2000㎡。
暮らしに使えるのは500㎡。
急に500㎡へ戻った。
最初は「斜面も素敵」と思っていた
とはいえ、
最初から斜面を嫌っていたわけではない。
むしろ、
少し傾斜のある土地は、
景色が良さそうだった。
高低差がある庭。
段々になった植栽。
斜面に木が生えていて、
その向こうに山。
なんだか、
別荘っぽい。
高原っぽい。
素敵。
と思っていた。
実際、
緩やかな傾斜なら、
今でも悪くないと思う。
問題は、
土地探しを続けているうちに、
斜面には「眺望」以外のものも大量についてくる
と知ったことである。
「造成」という知らない言葉が現れた
物件情報を見ていると、
ある言葉をよく目にするようになった。
造成。
最初は、
土地をきれいに整えること、
くらいに思っていた。
実際には、
家を建てる場所を平らにしたり、
土を削ったり、
逆に盛ったり、
排水を考えたり、
場合によっては土留めを作ったりする。
つまり、
斜面に家を建てようとすると、
土地を買ったあとにも、
土地そのものへお金がかかる。
家を建てる前から、
お金が消えていく。
私が欲しいのは家である。
土地を平らにする巨大工事ではない。
次に「法面」が現れる
そして、
法面(のりめん)
という言葉も覚えた。
簡単にいえば、
人工的、あるいは自然にできた斜面部分。
物件写真を見ると、
家の横に、
草の生えた大きな斜面がある。
昔の私は、
「あ、緑があっていいね」
くらいに思っていた。
でも、
知識が少し増えた私は違う。
これ、
誰が草刈るの?
となる。
平地なら、
草刈り機で歩けばいい。
でも斜面。
足場が悪い。
滑る。
暑い。
しかも面積が大きい。
庭として使えるわけでもない。
畑にも向かない。
犬も安心して走らせにくい。
なのに、
草は生える。
使えないのに管理は必要。
土地探しにおいて、
なかなか厄介な存在である。
そして擁壁が怖くなる
さらに出てきたのが、
擁壁。
高低差のある土地で、
土が崩れないように支えている壁。
最初は、
コンクリートの立派な壁を見て、
「お、ちゃんとしてる」
くらいだった。
ところが調べていくと、
古い擁壁。
ひび割れ。
水抜き穴。
高さ。
構造。
安全性。
再工事。
そんな話が出てくる。
そして何より、
修理や作り直しになると、
金額がかわいくない。
土地が300万円でも、
擁壁に何百万円。
場合によってはもっと。
なんて話もある。
それを知ったころから、
物件写真に立派なコンクリート壁が写っていると、
私はときめくどころか、
「君、いくらかかる子?」
という目で見るようになった。
だいぶ土地を見る目が汚れてきた。
「安い土地」には理由がある
地方の土地を見ていると、
ものすごく広いのに、
驚くほど安い土地がある。
2000㎡で数百万円。
あるいは、
それ以下。
東京の感覚で見ると、
「安い!」
となる。
でも、
少しずつ分かってきた。
広いのに安い。
その場合、
だいたい何かある。
斜面。
接道。
上下水道。
農地。
造成。
崖。
形が悪い。
場所が遠い。
もちろん、
単純に土地相場が安い地域もある。
でも、
安い土地=お得な土地
とは限らない。
むしろ、
買ったあとにかかる金額まで見ないと、
本当の価格は分からない。
300万円の土地に、
造成500万円。
水道300万円。
なんてことになれば、
もう300万円の土地ではない。
土地、
後から課金してくる。
ドッグランを考えると平地が強い
私たちの場合、
特に大きかったのが犬だった。
土地を広く欲しい理由のひとつが、
ドッグラン。
ならば当然、
犬が走れる場所が必要になる。
急斜面1000㎡より、
平らな300㎡。
犬にとっては、
たぶん後者のほうがうれしい。
人間も、
フェンスを作りやすい。
芝生にもできる。
ボールも投げられる。
見守りもしやすい。
そう考えると、
土地全体の面積より、
平らに使える場所がどれだけあるか
のほうが重要になってきた。
畑も平地がいい
畑も同じだった。
多少の傾斜はあってもいい。
むしろ水はけの面で、
緩い傾斜が向く場合もある。
でも、
家庭菜園を気軽にやりたいだけなのに、
毎回坂を上り下りしたくない。
土。
肥料。
水。
収穫物。
道具。
全部運ぶ。
畑仕事そのものより、
移動で体力を使いそうである。
私の目指しているのは、
修行ではない。
トマトである。
平地なら「あとから変えられる」
さらに、
平らな土地には大きな利点があった。
使い方をあとから変えやすい。
今年はドッグラン。
将来は果樹。
ここに小屋。
やっぱり駐車場。
畑を広げる。
ウッドデッキを増やす。
平地なら、
暮らしが変わっても、
比較的柔軟に使える。
一方、
急斜面は、
ずっと急斜面である。
突然、
「ここに駐車場作ろう!」
とはならない。
作ろうとすれば、
また造成である。
平坦地は、
何もしていないように見えて、
実はものすごく自由度が高い。
「絶景の斜面」より「普通の平地」
こうして土地を見続けるうちに、
私の好みは変わっていった。
最初は、
高台。
斜面。
眺望。
山がドーン。
そういう土地に惹かれた。
もちろん、
景色は今でも大事。
でも、
家を建てて、
犬を走らせて、
畑をして、
果樹を植えて、
外でご飯を食べて、
という暮らしを考えると、
毎日使いやすいことのほうが重要だった。
絶景だけど急斜面。
景色は普通だけど広い平地。
どちらかなら、
だんだん後者を選ぶようになった。
景色は、
少し歩けば見に行ける。
でも、
家の庭の斜面は、
毎日そこにある。
ただし「完全な真っ平ら」にもこだわらない
とはいえ、
完全な水平でなければ嫌、
ということでもない。
緩やかな傾斜なら、
むしろ好きだ。
少し高低差があることで、
庭に表情が出る。
奥に向かって少し上がっていたり、
森側だけ少し傾斜していたり。
そんな土地なら、
景色も楽しめる。
私が避けたいのは、
土地の大半が、
「そこ、どうやって使うの?」
という斜面になっている土地。
つまり、
欲しいのは、
平坦地+少し自然な起伏。
このくらいになってきた。
「面積」から「有効面積」へ
こうして、
土地を見る数字も変わった。
以前は、
2000㎡!
広い!
だった。
でも今は、
2000㎡。
そのうち平坦地は?
家を建てられる場所は?
車が入れる場所は?
犬を走らせられる場所は?
畑にできる場所は?
と考える。
重要なのは、
登記上の面積だけではない。
自分たちが暮らしに使える面積。
つまり、
有効面積だった。
1000㎡の平坦地と、
3000㎡の急斜面。
私たちの暮らしなら、
1000㎡のほうが価値があるかもしれない。
土地探しを始めたころには、
まったく考えていなかったことだった。
平坦地は地味。でも強い
不動産サイトでは、
絶景。
高台。
眺望良好。
森に囲まれた土地。
そんな言葉が目を引く。
平坦地。
という文字は、
正直あまり華やかではない。
でも、
土地探しを続けた私には、
その四文字が、
だんだん輝いて見えるようになった。
平坦地。
家を建てやすい。
犬が走れる。
畑ができる。
小屋を置ける。
駐車場を作れる。
草刈りもしやすい。
余計な造成費も抑えやすい。
強い。
地味だけど、
ものすごく強い。
こうして私の中で、
土地探しのひとつの基準ができた。
広さより、まず使えること。
そして、
その「使える土地」を探し始めた私は、
次にまた別のものを見るようになる。
土地の前にある、
一本の道。
そう。
広くて平らな土地を見つけても、
そこへ車が入れなければ意味がない。
このあと私たちは、
土地探し最大級の伏兵、
「接道」という言葉に、
何度も振り回されることになる。



